開票集計、最後の正念場 科学院「速報の情報開示を」

 大統領選挙は開票集計が最後の正念場になりそうだ。僅差でジョコウィ氏勝利の速報が大方だが、プラボウォ氏はメディアを駆使して必死の粘り。22日発表予定の開票結果はまだ宙に浮いており、焦点は公正な集計をできるかに絞られた。インドネシアの民主主義が試練にさらされている。 

 総選挙委員会(KPU)は集計を村レベルから郡、町、県市、州、全国と上り、22日に公式結果を発表する。東西5千キロ、1万7千島の島しょ国には、監視の目が届かないところがある。「ある程度の不正は織り込んでいる」のが実情だ。「集計での不正は頻発している。投票結果をゆがませられることは常識」(元KPU関係者)「一部の地域では有力者が開票結果を自由に操作できる」(政党関係者)。地方首長選ではしばしば集計での不正疑惑が浮上し、暴動につながる。
 日刊紙コンパスは11日付で、一般的な集計不正15点を列挙し、特に頻発する村、郡、町レベル(10〜15日の6日間)が正念場と報じた。イダKPU委員は「選挙で不正をはたらいた者すべてに法は執行されるべきだ」と警鐘を鳴らした。
 ジョコウィ氏は勝利を「事実」に落ち着けたい。陣営のメトロTVは10日夜、ジョコウィ氏が将来の国家像を語り、その後有識者が「新政権」をめぐって議論する番組を放送。選対草の根組織は村レベルでの手作業の開票集計を監視する。ジョコウィ氏は10日「どちらの陣営も集計に介入しないよう望む」。さらに選対は独自集計の「リアルカウント」すら作成し、ジャカルタ支部は「ジョコウィ氏は53%を得てジャカルタで勝利した」と主張。結果の改ざんを警戒しているのだ。
 これに対し、有利な形勢を創り出せるインフラを握るプラボウォ氏は独自の調査結果をテレビ5局で放映し続けている。5局を見ている限りでは同氏が勝ったふうだ。プラボウォ氏は「(イスラエルの空爆を受ける)パレスチナに対し10億ルピアを供与する」と表明。大統領職への強い意志をにじませる。
 ジョコウィ氏勝利を伝える主要8調査機関に対して、小粒な4調査機関はプラボウォ氏勝利と伝えた。だが、この4機関には疑問符がつく。特にLSNの調査は独自の曲線を描いてきた。LSNは6月上旬7.5%、同下旬6.7%プラボウォ氏リードと描いた。この時期、他の調査はリードするジョコウィ氏を、プラボウォ氏が猛追する構図で一致していた。JSIは総選挙まで闘争民主党(PDIP)の内部世論調査を請けていたが、調査結果と開票結果に大きな差が生じ作戦ミスを誘発したため、契約を切られたとの憶測も飛び交う。
 国立インドネシア科学院(LIPI)の政治学者ヌサ・バクティ氏は「すべての調査機関は開票調査の対象にした投票所、データなどを公表すべきだ」と要求したが、4機関は歯切れの悪い答えだけ。
 政府が中立を保っているかも重要な焦点だ。ユドヨノ大統領は国軍・警察、政府関係者に中立を求め、自身も中立の姿勢だったが、党首を務める民主党はプラボウォ支持。選挙戦終盤の4日に公邸ではなく私邸で同氏や政党党首と会談し、大統領を務めるにあたっての心得を訓示した。
 イスラム、カトリック、プロテスタントなどの宗教指導者は10日政府に中立を求めた。イスラム知識人会議(MUI)のディン・シャムスディン最高顧問は「すべての関係者が集計結果を受け入れないといけない」と話した。 (吉田拓史)

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