「下期に好転期待」 ことしの自動車販売 トヨタ野波社長

 2015年の自動車需要は冷え込み、通年の販売台数は14年と比べ、1割以上減少する見込みだ。トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア(TMMIN)の野波雅裕社長は、16年の販売台数がさらに落ち込むという自動車業界の見方があるなかで、「下期ごろからの好転を期待したい」と語る。インドネシアの自動車産業、製造業の現状と今後について聞いた。 

——2016年の自動車販売の見通しは。
 15年の自動車販売台数は102万台前後になる見込みだ。13年(122万台)、14年(120万台)に比べ減少幅が目立った。16年は、このまま景気が上向かなければ、前年並みかそれ以下になる可能性がある、というのが自動車業界の大方の予想だ。
 個人的には前年以上の回復を期待している。懸念のルピア相場は、米国の利上げによる影響がある程度織り込まれており、原油安についてもこれ以上大幅に下がることは考えにくい。政府が矢継ぎ早に打ち出した経済政策を確実に実行し、インフラ開発に着手していけば、ことしの後半ごろからの好転も可能だ。輸出に関しては、原油価格が下がることで、中東向けが減る可能性はあるが、横ばいとみている。
——現在の景気局面は。
 昨年はインドネシアが、中国の景気と原材料の価格に左右される産業構造だったことが反映された年だった。以前から指摘されていたことを、国として強く認識することができた年だったとみている。現状を踏まえ、インドネシア政府は今後2、3年で付加価値がある産業を重視するという方針へ大きく舵(かじ)を切るべき時が来ている。
——東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)が始まった。
 自動車産業で言うと、ティアワンと呼ばれる完成車メーカーの1次取引先はおおむね出そろった。一方で2次、3次はタイに比べてまだまだ弱い。産業全体で人材を育成する制度も不足している。鉄やゴム、樹脂材料、アルミなど原材料は依然輸入に頼っているが、インドネシアはそれらの投資誘致や、技術移転に力を入れ始めている。タイと比べるとまだ見劣りはするが、その差は数パーセントまで縮まっていると感じる。近い将来タイと同等か、それ以上の競争力を持つ可能性を持っている。
——インドネシアの競争力向上のためには。
 タイや中国の仕入れ先に発注することは可能だが、同じ価格であれば現地企業に発注する。価格が高くても、ポテンシャルがあれば現地企業に発注する取り組みを始めた。サプライヤーと一緒に供給網を強めていくことが将来のインドネシアを考えるうえで大切だ。
——日本の進出メーカーの役割について。
 日本と比べ、インドネシアでは製造業への理解がまだ不足していると感じることがある。トヨタは昨年に、自動車産業の人材育成を強化するために、工業高校卒業生などを対象とする教育機関を開設した。大学などで、製造技術者を養成するカリキュラムの作成も全面的に支援していきたい。
——ジョコウィ政権についての考えは。
 ジョコウィ大統領は民衆に選ばれた人。昔のインドネシアのやり方と相いれない部分があるため、旧来の政治システムの中で末端まで機能せず、バランスの取れた政策を取るのが難しい局面もでてくるかもしれないが、目指している方向は正しいと感じている。 (佐藤拓也、写真も)

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