違法採掘で5島水没 ジャカルタ北部プラウスリブ県 埋め立て工事に使用か

 ジャカルタ特別州北部の島々で構成されるプラウスリブ県で、五つの島が水没していたことが、政府の調べで明らかになった。沿岸住民によると、20年以上前に消えた島も含まれているという。野放図な砂の採取が原因だが、現在も違法採掘が横行しており、抜本的な対策は打ち出せないでいる。
 1970年代には無人島104島を含む115の島があったが、110島に減ったという。水没したのはウビ・ブサールとウビ・クチル、ニャムック・ブサール、ニャムック・クチル、ダプールの5島。いずれもジャワ島北岸に近い、同県南部に位置している。
 プラウスリブ周辺で活動する漁師が多いバンテン州タンゲラン県タンジュンパシルで話しを聞くと、住民の多くが、5島のうち少なくともウビ・ブサール島やダプール島は20年以上前に水没したと証言した。砂の採掘で島が小さくなった後、波などに浸食されたらしい。ウビ・ブサール島には人が住んでいたが、約30キロ北西の県都プラムカ島に移住したという。
 ダプール島があった場所に向かうと、船の上からでも海底の砂や石が確認できた。かつての島の中心部には灯台があり、周辺は水深1メートルほどの浅瀬が広がっていた。ウビ・ブサール島は完全に水没し、島の名残はない。
 遊漁船船長のバルウィさん(40)によると、タンジュンパシール周辺での採掘は80〜90年代に特に盛んで当時、周辺住民は採掘業者に反対するデモを組織していたという。「当時政府は住民の声を無視していた。今になって島の消滅が表面化するのは、政府がしっかりした対応をするようになった証だろう」と話した。
 ただ、砂を採掘する船は現在でも頻繁に確認されており、多くが無許可操業とみられている。3月にも、パリ島付近で操業していた船が当局のパトロール船に摘発された。操業許可の期限が切れているにもかかわらず、操業を続けていた。
 地元メディアが目撃者の話しとして報じたところによると、この船の活動で、島にあった一つの砂州が消滅した。採掘した砂は、ジャカルタ湾の埋め立て事業などを手がけるカプック・ニアガ・インダに供給されていたという。
 同湾では防潮堤や人工島の造成など多くの開発計画が進んでおり、砂の需要も高まっている。プラウスリブは開発現場から近く、違法採掘の標的になる恐れがある。
 プラウスリブ県のトリ・ジョコ・スリ・マルギアント知事は島の消滅の発覚や違法採掘の摘発を受け、海洋水産省や州政府に対策を要請した。広大な海での違法採掘は、パトロールだけでは発見が難しいとして、地元漁師らに不審船情報の提供を呼びかけている。(道下健弘、写真も)

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