人員は半分、改修も途中 海事調整省 全速航行にほど遠く 海洋国家の司令塔

 海洋開発など海に関わる分野の統括を目的に、海事調整省が発足してから半年以上が経つ。だが、職員数は目標の半分以下、事務所の改修も終わっていない。急ごしらえの組織な上、予算措置も十分でないことが理由。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の「海洋国家構想」実現に向け、司令塔としての役割が期待されるが、全速航行にはほど遠いのが現状だ。
 海事調整省は海洋水産や運輸、公共事業、観光の4省などの円滑な連携を目的に設置。水産・漁業から海上保安、海上輸送、観光まで幅広い分野に横断的に関与する。港湾開発を例に見れば、運輸省だけではさばききれない各省庁間の意見を調整。違法漁船の取り締まりでは、主管する海洋水産省にパトロール船の不足が生じた場合、海軍などに応援要請することなどを想定している。
 組織図上は、インドロヨノ・スシロ海事調整相をトップに、事務次官や各担当補佐官など高級官僚エセロン1が就く9ポストがあるが、海洋主権担当補佐官は今なお空席。エセロン2が務める局長級も含め、人員不足は深刻で、現在籍を置くのは約70人のみ。当初想定した200人の半分に満たない。
 新政権が打ち出した公務員新規採用凍結のあおりで、他省庁からの転籍者を集めなければならないことに加え、不十分な予算措置のために、転籍を決心させるだけの福利厚生が手当てできないという悩みがある。4日に正式就任したばかりのアセップ・ムハンマド事務次官は「組織をゼロから作り上げている最中で、他省庁で得られる利益を与えられる保障はない」と、人員獲得の難しさを語る。
 2015年予算の編成後に設置が決まった海事調整省には、海洋水産省割当分を組み替えた481億ルピアしか予算がないという。基本給以外に各種手当てが支給される他省庁と異なり、手当てはない。現在働く70人は海洋水産省や科学技術応用評価庁(BPPT)、財務省などの出身者。アセップ次官は「専門知識を生かして活躍したいという、野心的で献身的な人物ばかりだ」と評する。
 中央ジャカルタ・タムリン通りにあるBPPTビルの2〜6階の一部を間借りする事務所の改修工事も喫緊の課題だ。事務次官室ですら会議用の椅子はそろっていない。課長級の床にはBPPTから引き渡しを受けたままの古い絨毯が敷かれており、張り替えのめどは立っていない。
 アセップ次官は「多くの問題を抱え、職務の遂行能力は十分ではないが、組織を完成させ、具体的な目標を立てることが優先課題。その前に、快適なオフィスが必要だ」と話している。(道下健弘、アリヨ・テジョ、写真も)

社会 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly