「電気も水もない」 タナアバン火災 復旧はじまる密集地

 水路にかかる橋を渡ると、残った家の跡から焼け焦げた臭いがした。住民はシャベルを使って泥をかき出したり、建物を壊したりしている。時折建物を壊す大きな音が響いていた。中央ジャカルタ・タナアバンに隣接する住宅密集地のクボンムラティ。5日にあった火事で火災したのは400棟。2122人が今も避難生活を送る。

 線路沿いの仮設テントはぬかるんだ泥の上にある。女性や子どもが食事をしたり休んだりしているが、電気も水もない生活が続いている。
 「今夜はようやく明かりがつきそうだ」。火災から2日後のクボンムラティでは、焼け焦げた電柱に50センチ四方の街灯の取り付け作業が進んでいた。職員が付ける様子を下から見上げていたユヌスさん(54)は、2日間明かりがない生活を送っていると話す。「電気も水も無い。明かりがないから真っ暗だよ」。時々走る電車の光があるだけだ。
 臨時街灯の取り付けが進むのは線路沿いのテント周辺。テントの中では、子どもたちが使える服を選んだり、食事したりして過ごしていた。ただ、雨が降ると一帯がぬかるんで泥になる。「テントで寝泊まりする人は少ないんだ」とユヌスさんが教えてくれた。
 火災現場は、オートバイ1台がようやく通れる通路を挟んで、両脇に5平方メートルの広さほどの家屋が隣接。ほとんど隙間無く建てられていた建物に、火はあっという間に燃え移った。クボンムラティは一軒で4〜5人が生活し、子どもが多い地域。焼失した400棟は壁や階段だけ残して泥とがれきが積み上げられていた。

▼消火栓が不足
 クボンムラティは約125・63ヘクタールで、1万2576世帯、3万9505人が生活する。膝下ほどの水量しかない水路の南側住宅が、5日の火災で燃えた。
 消防車が通れる道から火災現場まで離れていたため、ホースを500メートル以上伸ばして消火活動をした。 また持ち込まれた給水ポンプは停電で使えず、住民らが水路や水道から水をくんで消火作業を手伝った。
 ジャカルタ特別州消防・災害対策局エンダン・スペニ局長は「州内の消火栓の設備が整っておらず、消火活動が進まない」と指摘。消火栓の数は北ジャカルタ298、中央264、東396、南236、西153で、西ジャカルタが最も少ない。うち使える消火栓が半数しかなく、設備改善が必要だとしている。(西村百合恵、写真も)

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