外貨準備

 10月に入って比較的速いペースでルピア安が進んでいる。対ドルでの下落幅は、今年の年初来で見ると他のアジア通貨と比べてもまだマイルドな下げだが、今月に入ってからの動きではマイナス1%と他通貨を大きく超える下げ幅となっている。
 先々週から先週にかけてインドネシア中銀もドル売り・ルピア買いの為替介入を行なっているようだが、さほど大規模な介入にはなっていなかったというのが為替ディーラーたちの共通した見方だ。
 今月上旬には中銀から9月末時点の外貨準備高も発表されたが、これは2カ月連続の減少となった。水準としては国全体の輸入高の6・1カ月分と、国際的に安全圏とされる3カ月以上を十分に上回っている。ただしトレンドとしては今年の4月から減少傾向が続いてきている。8月から施行されている資源輸出代金の国内保有義務も外貨準備の積み上げが主目的のひとつであったが、少なくともその部分について言えば目立った効果は出ていないということになろう。
 一般的に外貨準備は各国の中央銀行などの通貨当局が、対外債務の返済や自国通貨の安定を目的とした為替介入などに備えて、外国通貨建の資産を保有しておくものだ。いざという時に使えるということが大事なので、やはり米ドル建ての資産の比率が多くなる。インドネシアの外貨準備も7割は米ドル建ての債券(大半が米国債)で運用されている。
 外貨準備の水準が下がると、対外的な支払能力が低くなったと見做される。1998年のアジア通貨危機では、投資家によるアジア通貨売りと各国中銀の介入による通貨買い支えが相対したが、中銀サイドの外貨準備が枯渇して買い支えが続けられなくなったことで危機に至った。もちろん今はそのような状況を心配するほどではないが、外貨準備の減少トレンドは潜在的に通貨下落を想起させるという意味で、中銀サイドもセンシティブに反応しがちだ。
 外貨準備が減るのは、前述のように、政府債務の返済があったり、為替介入で自国通貨買いをしたりすることによる(インドネシア中銀も最近の外貨準備高減少の理由としてこの2つに言及)。これに加えて足下で起こっているのは、米ドル長期金利が上昇(債券価格は下落)したことで、中銀が保有するドル建て債券ポジションに相応規模の損失が出ているであろうことだ。これは外貨準備の減少幅を拡大させる方向に働く。
 これから先、どのようなシナリオが考えられるだろうか。中銀が為替介入を手控えると、ルピアの買い玉が少ないことにより、ルピア安が進む可能性がある。一方、介入を積極化させると、外貨準備の減少は加速するが、もしこれに市場参加者が過剰反応すると、これもまたルピア売り要因になり得る。いずれにしてもルピアにはやや不利な要因が残り続けることになろう。
 一方、ドルの金利環境が変われば、話は別だ。ドル金利の上限が見えて来ればルピアには大きな買い材料となる(ドル以外の大半の通貨にとっても同じ状況)。しばらくはドルの動向に依存した状況が続くが、変化が起こると早い展開となるかもしれない。(三菱UFJ銀行ジャカルタ支店長 中島和重) 

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