猛暑の実感

 インドネシアに住んでいると実感しにくいが、北半球を中心とした今年の猛暑は記録的な水準となっているようだ。日本からの出張者から「ジャカルタの方がよっぽど涼しい」と聞くのも珍しい話ではなくなった。2023年7月の世界の平均気温は観測史上最高となる見通しとのことだ。
 地球規模で進む気候変動との直接的な因果関係を問う声がある一方で、NASA(米航空宇宙局)をはじめいくつかの機関や研究者グループは、7月としては数百年か数千年ぶりの暑さとなる可能性も示唆しており、気候変動の影響を現実として受け止めるべき一つの事象と理解すべきでは無いかと思う。「産業革命以降の地球の気温上昇を1・5度以内に抑える」といったような国際合意で用いられるターゲットよりも、実際に体感する暑さとその影響は、多くの人にとってより切実な問題として気候変動を考えるきっかけとなるであろう。
 今年はエルニーニョの再来もあり、これによる世界的な水不足、干ばつ、森林火災等により農作物の大幅な収穫減が観測されはじめている。インドネシアでも今後、数カ月に渡ってパーム油やコメ、コーヒーといった作物での影響悪化が懸念されている。足元では雨量の回復を予想するデータも出てきており、そうなると前回19年のエルニーニョほどの影響は出ない可能性もあるが、いずれにしても不確実性の高い状況に変わりはない。
 欧州やアフリカでは、先月のロシアによる黒海の穀物輸出合意からの離脱と港湾攻撃もあり、既に食料価格の高騰が起こっており、猛暑と併せて人々の生活への影響が心配される状況になっている。先月の英エコノミスト誌の記事では、大幅な気温上昇、食料価格の高騰、財政支出の削減を、社会不安や騒乱を引き起こす3要素として挙げているが、既にアフリカのいくつかの都市ではデモや抗議行動が活発化しているようだ。
 直接的せよ間接的にせよ、気候変動が我々の生活へ影響を及ぼす度合いが高まっていると言えるかもしれないが、これはビジネスの世界でも同じだ。気候変動が企業業績に直接的な影響を与えた最初のケースと言われるのが19年のカリフォルニア州の電力会社PG&E社の破綻だ。米西海岸では近年乾燥による山火事の頻発と大規模化が起こっており、これは気候変動に起因するものと見られている。以前からPG&Eが保有・運営する老朽化した送電線からのスパークで小規模の火災が起きていたが、17、18年にはそれが原因の火災が大規模化、結果その損害補償を賄えず破綻申請するに至った。なお同社は再生エネルギーなどにも積極的で、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも投資家評価は高かったと言われている。多くのESG投資が、従来型の開示財務情報では得られない非財務ファクターを投資判断に反映させることを主目的とするが、その観点ではこのPG&Eのケースはより本質的にその部分を掘り下げていくべきことを実感させる事例であったと言えよう。
 予報によると8月も世界各地で猛暑が続く可能性が高いとのことだ。この猛暑の実感も、気候変動への取り組み加速に活かしていくことが求められるのではないかと思う。(三菱UFJ銀行ジャカルタ支店長 中島和重)

為替経済Weekly の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly