「共に創る脱炭素社会」

 世界的に気候変動問題に対する関心が高まる中、あらゆる産業活動において脱炭素化は避けて通れない課題となっている。各国において、カーボンプライシング(炭素課税)、排出量取引等の制度が検討されている中、欧州においては炭素排出の多い地域からの輸入に対して課税する炭素国境調整措置が検討されている。また、グローバル企業が、各地の生産拠点やサプライヤーに排出削減への対応を求めるケースも存在する等、インドネシアでのビジネスにおいても様々な影響が生じ始めている。
 インドネシアにおいては、2060年もしくはそれ以前のカーボンニュートラルを目標としているが、その達成は容易ではない。石炭、天然ガス等のエネルギーの化石燃料依存度が高く、例えば、電源構成における石炭火力の比率が約60%を占めている。その一方で、コスト面といった課題等もあり太陽光、水力、地熱等の再生可能エネルギーの導入は十分には進んでいない。
 日本政府は、岸田文雄首相が提唱した「アジアゼロエミッション共同体」構想において、インドネシアを重要なパートナーと位置づけ、脱炭素化を共に達成していくことを目指している。ただ、「共同体」を構成するためには、政府の取り組みだけではなく、産業界における日とインドネシアの協力プロジェクトを多数組成することが重要である。
 インドネシア進出日系企業は、これまでも様々な形でインドネシアの脱炭素化への協力を行っている。ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)カーボンニュートラルタスクフォースが今月12日に公表した報告は、日系企業217社が、インドネシアで累計554件のプロジェクトを実施していることを示している。
 また、日系企業のインドネシアにおける貢献は、インドネシア全体の二酸化炭素排出の5%を削減する効果があったとも試算されている。
 日系企業の貢献は、再エネ・省エネだけでなく、水素・アンモニア、自動車の自動化、CCUS(二酸化炭素回収利用貯蔵)を含む幅広い分野で行われている。日本が先進的な技術を保有し、かつインドネシア政府の方針とも一致するこれらの分野での貢献は、JJCが本年度の目標として掲げているスローガン「インドネシアが描く未来に寄り添うパートナー:日本」という考え方を体現する取り組みである。
 温暖化対策は、経済にとってコストとなるだけでなく、国際競争力の強化につながる産業構造の変革の契機ともなり得る。また、化石燃料への依存度の高いインドネシアでの排出削減対策は、例えば日本での対策と比較して費用対効果が大きく、世界的な脱炭素化を進めるためにも重要である。
 今後とも、日本の官民が連携し、インドネシア側の様々なステークホルダーとともに、具体的な取り組みを進めていくことが必要である。
 松田明恭 日本貿易振興機構ジャカルタ事務所次長(JJCカーボンニュートラルタスクフォース事務局)

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