輸入手続き規制の続報

 本欄で取り上げた通り、今年の初め、鉄鋼や樹脂などの複数の製品分野で全ての輸入許可手続きが止まった。これは、政府が国策として進める国産化促進政策の一環として、また実質的には新たな輸入管理政策として機能する、「商品バランス政策」の導入における混乱だった。
 ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)でも、鉄鋼や通関関税などの委員会が、日本貿易振興機構(ジェトロ)と共催でセミナー開催による情報提供を行ったり、日本大使館と連携し関係省庁への申入れなどに動いた。また、日本(JJC)、米国、EU、韓国の商工会議所などが共同で、経済調整大臣宛の要望書も提出した。
 こうした状況を受けた現状として、「商品バランス政策」の導入は一部の商品群を除いて延期されており、鉄鋼や樹脂など多くの製品の輸入枠については、国全体の国内需要に対する国内供給の不足分を輸入枠とする「商品バランス」の数字を使わず、申請には新システムを用いつつも、実際の数字は従前の方法で算定するという方法がとられ、2月以降に各製品分野での輸入手続きが再開されている。
 しかし、輸入の現場ではまだ問題が続いている。鉄鋼の分野では、輸入が認められるのが製造業(API—P)に限られているため、商社(API—U)による輸入が認められなかったり、樹脂の分野では商社による輸入申請が5回以上様々な理由をつけて差し戻しされたりと、企業は難しい対応を迫られている。複数の商社から、残念ながらインドネシアからの撤退を検討せざるを得ないとの声も届いている。
 こうした背景にあるのが、「原材料輸入に関する政令」(2021年第28号)において、原材料を輸入できる者を原則として製造業に限定した条文の存在であり、政府の一部の人々が抱いている商社に対する厳しい見方である。本件については、日本大使館とともに数次にわたり経済調整府等に申入れを行っており、インドネシアから輸出され外貨を獲得している自動車生産への影響が生じかねないこと等を日本側から説明し、先方からは「商社の輸入を可能にする政令改正を行っているところ」と説明を受けてきた。
 それから既に2か月、「間もなく」との話も聞こえるが、本改正が早期に実現することを強く期待している。
 さらに、商社に対するこの国の一部の厳しい見方については、商社が生産のために必要な世界から仕入れた原材料等を、円滑にタイムリーに必要な量だけ納品できるネットワーク・ノウハウをもって付加価値を与えており、この国が望む工業化に大きく貢献できることを示していく必要がいく必要があるだろう。
 その一方、延期された「商品バランス政策」の方がまた動き出すことも考えられる。今年度のJJCの活動方針は「インドネシアが描く未来に寄り添うパートナー:日本」。インドネシアが望む未来をまずは受け止めつつ、信頼関係を作り、現実に起きてくる問題についてもより良く解決するよう取り組んでいきたい。(JJC事務局長 小倉政則)

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