人口増と高齢化

 中国の人口が昨年末時点で減少に転じたと報じられた。すでに数年前から減少し始めていたとの推計もあったが、今回は中国国家統計局からのオフィシャルな発表に基づく。国連によるインドの推計人口と比較すると、すでに中国の人口はインドを下回った模様だ。中国は2016年の一人っ子政策撤廃後も出生率は低調に推移しており(20年で1・3人)、一方で平均余命は継続して上昇傾向(20年で78歳)にあるので、今後、先進国以外では前例のない規模での少子高齢化社会を迎えることとなる。以前は中国がいずれ米国の国内総生産(GDP)を抜くとの予測もあったが、今ではこの人口動態を主な理由として、この予測を否定する向きが大宗となっている。
 インドネシアはどうだろうか。出生率は1980年に4・5人、2000年2・5人、20年2・2人と減少傾向にあるが、依然として人口増加をサポートする高い水準をキープしている。足下で1億9千万人近い生産年齢人口(世銀基準)を抱え、30年代まで人口ボーナスを謳歌できるのはこの高水準の出生率のおかげだ。一方、平均余命も順調に伸びてきている(20年は69歳)。所得・医療水準が高いジャカルタだけで見てみると平均余命は73歳とかなり高く、30年にはこれが80歳に届くとの試算もある。先進国の平均余命は10年毎に2〜3歳伸びてきたと言われるが、ジャカルタのこの試算はこのペースを大きく上回っているので、生活水準や医療の質の改善スピードがそれだけ高い表れと言えるかもしれない。いずれにせよ人口増と並行して高齢化も急ピッチで進んでくると予想される訳だ。
 現在、インドネシアでは高齢者(インドネシアの国内基準だと60歳以上)は全人口の1割程度を占めているが、このうち2人に1人がまだ就業しており、純粋に生計のためインフォーマルセクターで働き続けている層が少なくないと考えられている。高齢化の進展に伴って、これまでコミュニティレベルの相互扶助に頼っていた社会保障を、国や地方自治体として拡充していくなどの課題がでてくるだろう。
 一方で、個人レベルで真に重要なのは、これは古今東西を問わずだろうが、寿命が伸びていった時に健康かつ幸せな生活を送ることができるかどうかであろう。ハーバード大学には80年以上もの長きに渡って特定の成人の人生を追跡調査している研究プロジェクトがある(Harvard Study of Adult Development)。人の人生に関する研究としては最も長寿のプロジェクトといわれているが、この研究成果の本旨は、幸福で健康な人生を送れるかどうかは、良好な人間関係(特に人数よりも質)が最も大きな要因となるということだ。最近になって英国や日本で孤独担当の大臣職が設置されるようになったのも、このような考え方と通底しているだろう。
 家族や友人との親密な人間関係や自然発生的な社交を好むインドネシアの人々が持つ国民性は、これから到来する高齢化を生き抜く上でも強みとして作用するのではないだろうか。経済発展に伴って都市化や核家族化がさらに進んでいくだろうが、守っていくべき価値ある文化なのではないかと思う。(三菱UFJ銀行ジャカルタ支店長 中島和重)

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