資源エネルギーの供給確保

 2022年は世界の地政学的秩序が大きく揺らぎ、経済社会活動に多くの困難を与えた年となった。ロシアによるウクライナ侵攻から10カ月余りが経過した今もなお、収束に向けた動きが見通せない状況は、世界はもちろん、インドネシアにおいても重い足枷となっていることは明白である。こうした中、20年にマイナス2・1%成長を記録して以降、インフレ圧力や世界経済の鈍化に伴う影響を受けつつも、今年のインドネシアは国内総生産(GDP)の5割以上を占める個人消費の回復や、入国制限の緩和、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)開催による観光客・出張者の増加等により、ウィズ・ポストコロナに向けた経済回復の兆しから5%台の成長を遂げ、今後の発展も期待されている。これら成長や発展を支える基盤・戦略物資として、従前から資源エネルギーが挙げられていることは申し上げるまでもなく、今日でも緊迫化する世界情勢下で資源獲得を巡る競争は激化している。
 純分換算で約2100万トンと世界第1位の埋蔵量を誇るニッケルをはじめ、石油、ガス、石炭、地熱等の多種多様な天然資源を有するインドネシアでも、多くの国・企業が以前から資源開発・生産活動を進め、現在でもさまざまな挑戦に取り組んでいる。また、供給される資源エネルギーの形態も、世界情勢や技術革新、カーボンニュートラル等の時代の変遷や要請とともに多様に変化し、現在は再生可能エネルギーや水素、アンモニア、さらにはCO2の回収・貯留、いわゆるCCS等にも注目が集まっている。21年時点でのインドネシアの発電電力量の主な構成は、石炭が62%に対し、ガスと再生可能エネルギーが共に18%となっており、今後も増大を続ける電力需要に対し、新たな技術獲得等によるエネルギートランジッションの確立が急務となっている。
 こうした中で11月、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は新たに水素、アンモニア、CCS等もスコープとし、今後、技術的知見を活用した資金面・技術面での支援強化やサプライチェーン構築に取り組むとともに、普及に不可欠な制度面での検討に関与し、基盤づくりに貢献していくこととしている。また来年4月には、インドネシアをはじめとする有望国・地域での地熱資源探査等への支援業務も開始予定である。
 資源エネルギーの安定供給確保に向けた体制構築や取組強化は、その国・地域の行方を左右する命題といっても過言ではなく、インドネシアでも2060年のカーボンニュートラル実現をも包摂した持続的な安定供給確保や、新たな資源ビジネスの確立を通じた新産業創出が課題となっている。来年は戦後78年、さらにその78年後は22世紀が到来することとなるが、来年以降も、2030、2050、2060年、さらには22世紀に向けても、世界の経済社会活動を支え続けていくため、JOGMECはもとより関係機関・企業の一層の活躍が期待されている。
 JOGMECジャカルタ事務所長 川村伸弥(JJC公的団体グループ代表理事)

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