いよいよクラウド

 コロナ禍で在宅勤務が増え、海を越えたビデオ会議システムを使っていると、インドネシアの我々だけ映像が固まっている、という場面に何度も出くわす。インドネシアにおいては通信インフラがまだまだ弱いと感じる場面だ。
 インドネシアの通信環境は未だ普及の途上であるが、2014年にインドネシア・ブロードバンド計画という施策が立ち上がり、政府主導によるインターネット環境の強化施策を実施しており、引き続きインフラの強化を継続していくものと考えられる。
 そして今後、その流れを強力に後押しするのが相次ぐパブリッククラウド事業者のインドネシア市場への積極投資である。記憶に新しいところでは、昨年12月にパブリッククラウド事業者最大手のAWS(Amazon Web Services)によるインドネシアでのデータセンター開設が発表された。
 インドネシアでは政府によるデータ保護規制が存在するため、データの保存先が国外になってしまう前提では、多くの企業はパブリッククラウドの活用に消極的であった。AWSがデータセンターをインドネシア国内に建設した事で、活用におけるハードルが下がった形だ。
 このようにパブリッククラウド事業者が続々と参入し、インドネシアへの積極投資を行ってきているため、今後はさらに活用の裾野は広がっていくだろう。
 一方で、まだ多くの企業からパブリッククラウドの活用を躊躇する声も耳にする。従来のシステムは物理的な機器を自社の施設で管理してきた。ところが、インターネットを経由してクラウド上にシステムを構築してアクセスする事になれば、クラウドに繋ぐためのネットワークの品質やクラウド上に構築するシステムのセキュリティーなど、新たに考慮すべき事項が多く存在するためだ。 
 我々のグループ会社である伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が当地のITサービス企業、コンプネット(PT Nusantara Compnet Integrator)に資本参加し、事業を行っている。ローカルならびに日系の顧客基盤を持つ会社だが、最近の営業現場ではこんな顧客のクラウドに関する悩みを聞く事が多い。
 リソースを用意したいときにワンクリックでできるなど非常に利便性が高いのだが、共有リソースであるクラウド上にセキュリティや可用性を担保したシステムを構築するためには、クラウドに特化した専門的な知見が必要になる。
 このためコンプネットではそのような課題を持つ顧客のため、クラウド活用に向けたコンサルティングサービスの提供を始めた。元々データセンターインフラや拠点間ネットワークの構築に強みを持っており、そこにクラウドを加えた一気通貫の支援依頼を受けるケースが増えてきている。AWSと政府系顧客向けのイベントも共催したが、多くの関係者が参加して好評だった。
 メリットもある一方で活用におけるハードルも存在するパブリッククラウドだが、インドネシアにおいてもあらゆる産業でデジタルの活用が加速する事が考えられ、クラウドファーストでのビジネス企画(システム検討)は今後浸透していくだろう。
 木村亨 伊藤忠インドネシア社長(JJC副理事長兼法人部会長)

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