ガイドブックに載る気がしない コタ・トゥア探索

 「インドネシアで最も歴史ある観光地のひとつ」として4月30日の本紙に政府によるジャカルタ旧市街コタ・トゥアからスンダクラパ港一帯の観光地化・再開発案浮上の記事が掲載されていました。記事中、僭越(せんえつ)ながら観光業界のコメントをさせていただきました。「経済発展著しい商業都市」と形容されるジャカルタは、それゆえに「観光都市ではない、観光するところがない」と言い換えられてしまうこともあります。そんなジャカルタの街の中でもコタ・トゥアは今でも立派な観光地。今後、開発の手が入れば美しくリニューアルされる物、消えて無くなってしまう物もあるでしょう。そこで今回のおすすめ観光情報は、ガイドブックには載っていない、そしてこれからも載る気はしない(笑)、コタ・トゥアの今、2021年5月のチェックポイントを紹介します。

 街歩きのスタートはファタヒラ広場、この広場のアイコンであるジャカルタ歴史博物館を背にして右側の絵画陶磁器博物館から始めましょう。絵画陶磁器博物館にはインドネシアの巨匠ヘンドラ・グナワン氏の絵画や国内外の陶磁器が多数展示されています。その中に一瞬息を飲むほどの日本の陶器のコレクションがあります。鎧姿の武士が描かれた器など、オランダ時代の街並みばかりがクローズアップされる同エリアで日本とのつながりが確認できる貴重な美術品、必見のお宝です。
 絵画陶磁器博物館を後にしたら北上です。注目するのは標識や建物の壁に書かれた道の名前。「Jl. Kunir(ウコン通り)」「Jl. Teh(お茶通り)」「Jl. Cenkah(丁子通り)」など、まさにインドネシアならではの、今にも香ってきそうな道路名の数々が続きます。まさに歴史ヒストリア。当時、このあたりに船に乗せる前の大きな倉庫があったのかもしれない、景色はどんなだったのだろう……。人々の様子は……。想像しながらのお散歩では、崩れそうで色あせた感じの古い建物もあいまって数百年のタイムトリップです。
 さらに進み「Jl. Nalayan(漁師通り)」を交差すると一変、道路名も山の特産品から海の特産品へと変化していきます。「Jl. Tongkol(マグロ通り)」「Jl. Kurapu(ハタ通り)」西側には「Jl. Kakap(キンメダイ通り)」など。もうすぐそこは海なのです。その中でも探索コースとして特におすすめなのはキンメダイ通り。三輪自転車タクシーのベチャを使用した半立体的な壁画から思わずニヤッとしてしまう個性あふれるアートまで、鮮やかな色とデザインがあふれています。
 海といえば、忘れてはいけないのが海洋博物館。かつてはアジア随一とも言われたインドネシアの海運技術と歴史を紹介する海洋博物館です。2018年の火災で歴史的建造物や貯蔵品の多くが消失しましたが、現在では「ここだけ地中海の海沿いですか?」とでも感じるくらい改修済みで、美しく再生された白壁と入口横に配置されたふたつの錨が印象的です。
 その錨の一方に注目です。「昭和14—12」と日本語が刻印されています。日中戦争、第二次世界大戦勃発当時の日本軍のものかもしれません。こんな雨ざらしの場所、今では子供達の遊び場になっているところにあまりにもサラっと置かれていることに驚くと同時にぐっと近くに感じる歴史、日本とインドネシアの関係。実はとっても奥深いです。
 ところで、コタ・トゥア界隈は鉄道、バジャイ、自転車タクシー、新旧様々の車輛が利用された乗り合いバスなどが活躍する乗り物好きにはたまらない乗り物天国エリア。街歩きでは行きかう乗り物をつい目で追ってしまうのですが、運河沿いのパーキングエリアで目にした光景には思わずうなってしまいました。各メーカーの日本車が見事に1台ずつずらっと横並び、まるで展示会です。探索のフィナーレを満足度100%で迎えることができました。
 見所も魅力も満載の現在のコタ・トゥア、いかがでしょうか。ただし、日本と同じような感覚では歩けない道路事情であることも事実なので散策の際には気を付けなければなりません。再開発では現在の魅力と趣を残したまま、こうした部分が改善され、さらにパワーアップした観光地となるよう祈ります。(日本旅行インドネシア 水柿その子 写真も)

◇日本旅行インドネシア
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電話  021-520-2091
メール sonoko_mizugaki@jabatojkt.com

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