ジャワの心に触れる旅 ジョグジャカルタ・ヴレデブルグ要塞博物館へ
ジャカルタでインドネシアの人に「出身はどちらですか」と尋ねると「ジャワ」と答えられることがあります。ここ首都ジャカルタもジャワ島にあるのだし、でもジャカルタという意味ではなさそうで、ジャワとは何処ぞのこと?そう思い聞き返すと中部ジャワの町名が出てきます。「ジャワ」とは「中部ジャワ」のこと。そうしたやり取りの中から改めてインドネシアの文化や人々の民族意識を感じたりします。今回のおすすめ観光情報はそんな中部ジャワのジョグジャカルタ特別州にあるヴレデブルグ要塞博物館を紹介します。
ジョグジャカルタ中心部の目抜き通りマリオボロ通りを南に下り、マルゴ・ムルヤ通りと名前を変えたその道と東西のクロスするペナンバハン・セノパティ通りの交差点、観光地として最も賑わう1角にヴレデブルグ要塞博物館はあります。この交差点は「ジョグジャカルタの0地点」と呼ばれ、その名の通り街の中心を意味しています。王宮や伝統芸能のワヤン鑑賞が出来るソノブドヨ博物館からも近い歴史的にも重要なジョグジャカルタの観光エリアにありながら、時間に限りのある旅行日程に含まれることは少ないのがもったいない、リピーターにはぜひ訪れて欲しい博物館です。
ヴレデブルグ要塞博物館は1765年、オランダ植民地時代に当時の植民地政府によって建設されました。ヴレデブルグ(Vredeburg)とはオランダ語で「平和の砦」という意味で日本軍政時代には日本軍もここに本部を置いていたそうです。
博物館として開館したのは1992年。稜堡式城郭という多角形を基準に設計され、2100平方メートルという広大な内部は立派な防御壁に囲まれています。博物館として活用されている建物も複数に分かれていて歴史の順を追って進むことができます。ジャカルタの独立記念塔の地下博物館にもあるようにジオラマ風の展示はインドネシアの博物館ではよく見かける展示方法ですが、この博物館では集中的にジョグジャカルタの歴史が深く掘り下げられているところが興味深いものです。
ジオラマ以外にも、映写機や日本刀などの実物やデジタルを駆使した展示も見応えがあります。植民地時代や戦時中、インドネシア、日本、オランダなどの国々がどう関わり合いながら現在のジョグジャカルタという街、インドネシアという国に至っているのか、英語とインドネシア語で丁寧に書かれた説明文にも目を通しながら歴史を追ってみたいものです。また、本物の歴史ある建物を背景にジャワの伝統的な衣装を着てモデルさながらの写真を撮るというお楽しみも。日本のインバウンド旅行者に人気の着物を着て浅草での写真撮影みたいなものなのかも知れませんね。
ところで、世間話がとても上手いインドネシアの人々。ポンポンと次から次へと話題が出てきて初対面同士でも数年来の親友のような会話が展開されることも少なくありません。シャイ、口下手、警戒心、必要性の無さなど諸々の理由からか他人と打ち解けて話すことに不慣れな日本人としては面を食らうことも。そんな彼らは話術や情報の大師匠。会話にはインドネシア文化、日本についての意識、とあるインドネシア人の考え方など一期一会にして大容量の情報が詰まっていています。本なら繰り返し読む事ができます。家族や友人ならまた会って話す事も出来るでしょう。しかし奇跡的偶然の出会いから得られるものはその時を逃すと二度とないもの。皆様もぜひ旅行中に出会う人達と気軽な挨拶やお話をして心の財産をひとつ蓄えてみてはいかがでしょうか。(旅とアートのクリエーター 水柿その子 写真も)
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