【ジョクジャ特集】 ホテル 開業ラッシュ ムラピ山麓 田園の宿

 日本の京都に例えられる古都ジョクジャカルタ。世界遺産のボロブドゥール寺院を抱え、バリ島に次いでインドネシアを代表する観光地として国内外の観光客でにぎわってきた。近年は好調な経済を反映し、空前のホテル開業ラッシュが続いている。昨年オープンしたホテルは16軒と過去最高を記録。王宮やマリオボロ通りなど観光客でにぎわう市街地に集中しているが、北部のムラピ山山ろくでも、田園が広がる中にジャワの伝統様式と現代的な要素を組み合わせた新しいスタイルのヴィラが造られるなど、従来の遺跡観光に付加価値を付けようとする動きも出ている。(配島克彦、写真も)

■市街地に集中
 ジョクジャカルタ特別州観光局によると、正式に登録されたホテル16軒はいずれも三つ星以上で、観光客やビジネスマンが集まるマリオボロ通り周辺に集中している。特にジョクジャでMICE(研修、視察、会議、展示会)が多数開催されるようになり、全国各地で展開するポップ、フェイブ、アマリスといった1泊30万―50万ルピアの中級ホテルも出そろった。バックパッカーらも集うマリオボロ通り裏のソスロウィジャヤン通りだけでも3軒がオープンした。
 一方で、高級ホテルが並ぶ大通り沿いには、プルウォクルトなど中部ジャワでのチェーン展開も強化している大手アストンが進出。来年には、ジャムー(伝統薬)会社のシド・ムンチュル社がホテル業界に初参入し、五つ星のトゥントラムをオープンする予定で、中級から高級まで各クラスのホテルの競合がさらに激化しそうだ。

■地元民と協力
 一方で、ジョクジャ北部にそびえる霊峰ムラピ山山ろくでは、市街地とは異なり、豊かな自然を楽しむためのリゾートも増え始めている。
 市街地から車で北上して約40分。山頂付近の観光地カリウランの手前に「サンビ・リゾート・スパ・レスト」が昨年オープンした。のどかな田園風景が広がる川沿いに、竹を多用した2階建てのヴィラや平屋の部屋、ミーティングルーム、スパなどが並ぶ。
 「山ろくの村落の雰囲気を楽しみながら、くつろげるリゾートはこれから注目を集めるはず」。オーナーのサンディ・ラハディアン氏(41)は、コンビニ経営などを手掛けてきたが、観光客増加を見込んで市街地に中級ホテルをオープン。今度はリゾート開発に乗り出した。
 目を付けたのは、村おこしの一環として、村民が中心となって運営している「デサ・ウィサタ(観光村)」。農村の民家にホームステイしながら、バティックや舞踊、ガムランなどの伝統文化を体験し、稲作や果物栽培などを学ぶプログラムを提供してきた。
 しかし、これまでジョクジャの30以上の村落が観光村の整備に取り組んできたが、主に受け入れてきたのはジャカルタやスラバヤなどから訪れる小中高生たち。そこで国内外の観光客を対象に、観光村の体験をリゾートと組み合わせて提供しようと考えたという。
 また地元の人々との協力も重視した。ホテル名にした地元のサンビ村は人口200人ほどの集落だが、舞踊や音楽などで優れたアーティストたちの宝庫でもある。ジョクジャ随一の高級ホテルで舞踊劇を担当しているグループも村内にあり、宿泊者が村落の雰囲気の中で気軽に伝統芸能を鑑賞できるようにしたという。
 これからのマーケットは、急成長を遂げるアジア諸国の観光客。「年代物の木彫りに囲まれた部屋を好むのは、欧米の観光客が多い。アジアの人々は高級ホテルのような快適さを求める」と分析。伝統的要素と高級感のバランスに配慮したという。

■イメージ刷新
 ジョクジャ最大のゴルフ場「ムラピ・ゴルフ」に隣接するヴィラ「チャンクリンガン・ジョクジャ・ヴィラ&スパ」の運営ディレクター、ルビー・アリス氏は「ジョクジャ観光のイメージを刷新するのが先決だ」と指摘する。
 同ヴィラのオープンは2005年。外国人向けに、プライベートプールを完備した5種類、計13部屋のヴィラを用意した。しかし、ムラピ山でリゾートを楽しもうとする外国人はまだ限られ、主な宿泊者はインドネシア人。最近はジャカルタからやって来る家族連れや企業などが8割以上を占めるという。
 ガジャマダ大学(UGM)で観光学の博士課程に在籍中のルビー氏は「バリ島のウブドのように長期滞在したいと思わせる景観や娯楽施設がなければ、いくら自然に囲まれていても外国人誘致は難しい。遺跡見学の日帰り旅行から脱却し、もっとさまざまなジョクジャの顔を楽しんでもらえるように工夫していく必要がある」と話した。

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