【じゃらんじゃらん特集】 首都最古の熱帯魚市場 中央ジャカルタメンテン

 赤、青、黄の色鮮やかな南国特有の熱帯魚が水槽の中を泳ぐ。足下はゾウガメがのしのしと闊歩する。高級住宅街として知られる中央ジャカルタ・メンテンのはずれにはスハルト時代から続く熱帯魚市場がある。休日にはインドネシア人だけでなく、アメリカ人や日本人、中国人など多くの家族が訪れる都会のオアシススポットだ。(高橋佳久、写真も)

 「ikan hias(熱帯魚)」と書かれた大きな看板をくぐり、うっそうと生い茂る樹木に囲まれた市場の中に入ると、体長1メートル以上のアロワナや美しいひだを持つクラウン・テール、青色のザリガニにカクレクマノミなどが泳ぐ。
 138ある店舗では、バリやプラウスリブ、パプアといったインドネシア国内だけでなく、ハワイやブラジルのアマゾン、オーストラリアからも魚が集まる。日本から輸入したという1匹10億ルピアの大きな高級鯉から30万ルピアほどの鯉も。
 父親と一緒に店を切り盛りするティアルさん(21)の店舗では成長すると体に「6」の模様が現れる「レター・シックス」がお勧め。特にアチェ産が人気で1匹13万ルピア。また、一匹の親から5年に1度15匹しか生まれず、非常に珍しいという、クラウンフィッシュ・ピカソ・プラチナも入荷する。値段は応相談。ティアルさんによると、仕入れ先はバリが多い。バリでは熱帯魚の輸入検査が甘いからだという。
 市場には熱帯魚の他にも大小さまざまな水槽や水草、流木なども並ぶ。水槽を主に取り扱うファンタジー・アクアリウムのアルトさん(58)によると、インドネシアは気温の変化が少ないために、熱帯魚の飼育も日本に比べると比較的容易で、エアーポンプやフィルターをそろえるだけで簡単に飼育することが可能だという。「水槽や水草などをセットで購入するとお安くできます」とアルトさん。
 市場の一角にはアマゾンからアロワナや世界最大の淡水魚として知られるアラパイマなど、巨大な魚も泳ぐ。スマルトノさん(53)は「大きな魚は観賞魚としてもいいけど、食べてもおいしいよ」と勧めてくれた。
 中央ジャカルタには、メンテンの他にもカルティニ・ラヤ通りやパサール・バルにも熱帯魚市場があるが、メンテンが最も売り場面積が広く、種類も最も豊富だ。

■オランダ時代から
 熱帯魚市場を管理するジャカルタ特別州観光公園局熱帯魚振興部のアブディラ・ラフマン部長(57)によると、市場は戦後、メンテンに高級住宅街が並び始めたころ、漁師らがオランダ人相手に商売を始めたのがきっかけだという。
 当時は路上で販売していたが、交通の妨げになっていたことや政府が熱帯魚を商売として計画したことから市場を整備。当初はトゥク・チック・ディティロ通りにあったが、手狭になったため、1969年に現在のスメネップ通りに移転した。
 ラフマンさんは「以前は外国人が訪れるのみだったが、現在はインドネシア人客の割合が5割ほどまで増えている」と話す。地元の人々に熱帯魚を飼育する生活が根付いてきているという。「売り上げも1月に1店舗あたり1千万ルピア。2000年ごろに比べると売り上げは1.5倍ほど増えている」と語った。
 順風満帆の熱帯魚市場の一番の不満は州政府が新たに進めている都市計画。市場を移転させて、きれいな公園として整備しようとの案もある。ラフマンさんは「熱帯魚市場は市民の憩いの場として愛されている。無理に撤去する必要はない」と話した。

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