知的好奇心を満たす インドネシア国立自然史博物館
この2年の間、私たちの生活を大きく変えてしまったコロナウイルス。「旅行」が人生にとって必要不可欠な物か、実は無くても良い物なのか、健康や基本的生活基盤を守ることが大前提となった今、その価値が問われたりしています。しかし、人生そのものが旅であるなら、新しい発見を求め、知的好奇心を満たし、豊かに暮らすことを楽しみたいものです。今月のおすすめ観光情報は、ボゴールにあるインドネシア国立自然史博物館(Museum Nasional Sejarah Alam Indonesia)を紹介します。
ボゴール植物園をぐるっと一周する中心地、植物園の西側に建つインドネシア国立自然史博物館は、植物と民族の相互関係を研究する民族植物学という観点から始まり、インドネシアの天然資源、環境変化、植物、動物、人類の起源や分布、文化や化学の発展など自然科学や民俗学の分野を多様な角度から記録し若い世代へ伝える教育の場として、1982年に開館しました。
エントランスを入るとドイツ人植物学者ゲオルク・ルンフィウスの紹介から始まります。オランダ東インド会社から派遣され、インドネシアにやってきたルンフィウスは生涯をかけて超大作『アンボイナ植物誌』を書きあげ、約1200種におよぶアンボン島の植物を図解入りで紹介しています。著者没後の1741年に出版された同誌が当時の西欧諸国にとってどれだけ衝撃的だったかは想像に難くありません。
その後、ボゴールの運命はナポレオン戦争で一時ジャワ島が英国の支配下となった間に変わります。1812年、シンガポールのラッフルズホテルで有名なラッフルズ総督が創設した私設庭園が起源となりボゴール植物園が開園。この博物館の展示も1817年に最初の園長を任命されたカスパー・カール・ゲオルク・ラインヴァルトはじめ、功績を残した歴代館長の説明や貴重な植物採取記録などが続きます。
ここまでがプロローグ。順番通りに進むにつれてその圧倒的な情報量に驚かされます。インドネシアの生物の分布境界線、代表的な生態、生物の誕生から絶滅への警鐘、宇宙や地球の誕生、人類の進化、自然との共存、ラボラトリウムでの植物研究の様子と当時の器具や資料、植物画のリトグラフ、インドネシアにおける自然資源と各地文化との融合、バティック染料などの芸術や生活用具への活用、薬としての伝統的用法から、インドネシアの持続可能な未来への提言など、工夫を凝らした展示は延々と続いて行きます。
中でも思わず叫んでしまったおすすめは先史時代の洞窟で暮らしていた人類のジオラマです。インドネシアは知る人ぞ知る洞窟の宝庫。近年でも人類史の常識を覆す洞窟壁画が次々と発見されています。洞窟壁画といえば有名なフランス・ラスコーの洞窟壁画は推定2万年前のもの。一方、インドネシアでは4万~4万9千年前とも推定される洞窟壁画がスラウェシ島などで発見されており、そのうちのひとつが例としてダイナミックなジオラマで展示されているのです。思わず博物館の床に座り込んで一緒に当時の空気感を感じてみたい、洞窟好きにはたまらない展示物です。
インドネシア国内旅行、行ってみたいけどもう少し様子を見ようという方も、すでに計画がある方もインドネシアの地理や各地の文化の予習をしてみる絶好の場でもあります。コロナ禍で学習機会が減った子どもたちにもおすすめ。自然、科学、歴史、地理……多様な分野の知的好奇心を満たす語りつくせない魅力が詰まった至福の博物館、インドネシア国立自然史博物館に皆さまもぜひ足を運んでみて下さい。(日本旅行インドネシア 水柿その子 写真も)
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