未知への憧れと希望抱かせ 船と暮らす人々 (下)

 断食月が明けました。例年であればこの時期は一時帰国や旅先での休日を満喫していたり、お土産話に花を咲かせているところ、今年はかつてない、そしてもう二度と同じ状況は経験したくはないという前代未聞のレバラン(断食月明け大祭)になっています。私たち人類は皆、この青くて美しい地球という宇宙船に乗りながら、いくつもの時代を生き抜いてきた旅人です。船に乗っていれば、穏やかな波に心地良く身を任せる時も、激しい荒波に揉まれ飛ばされそうになることもあるでしょう。そんな状況にどうやって立ち向かい、困難を乗り越えていくべきか……。もしかしたら船という乗り物が考えさせてくれるきっかけになるかもしれません。今回のおすすめ観光情報は前回に続き、インドネシアで船と共に生きる船の達人たちと様々な船を紹介します。

■ジャカルタのイカ釣り船
 無類のイカ好き国民、日本人にとっては「イカ釣り船」からは故郷の香りが漂ってくる気がします。インドネシアの海にも豊富なイカが生息していて、アマチュアの釣り好きさんでも釣る事ができるのだそうです。インドネシア各地の漁港付近の「パサールイカン」でもたくさんの種類のイカが売られているので食べ比べてみるのも楽しいです。

■富裕層のボート
 臨海都市を売りにした富裕層向け住宅街では自宅裏に船着場があり、そのまま海に出られるという豪邸もあるジャカルタ。そうでなくてもプライベートボート保有者には会員制のマリーナもあり、停泊やメインテナンスを委託することができます。週末プロウスリブへちょっとお出かけ。そして有事の際の緊急脱出用にも一時人気が沸騰しました。

■巨大石炭タンカー
 ジャカルタ湾での釣り船から遠くに目撃したおにぎりのような物体。近づくにつれその正体が明らかになった時には、特撮映画並みの非現実的で圧倒的な存在感に驚かされた石炭を運ぶ巨大タンカーです。夢のような青い海に浮かぶしっくいの石炭の山は、遠くカリマンタンからやってきたんだそうです。船長さんが教えてくれました。

■伝説の湖に浮かぶ船
 中部ジャワ、アンバラワ、周囲を明峰に囲まれた盆地に静かに広がる湖。鏡のように空の色を反射する水面は清く穏やかで、それを覆う無数のホテイアオイの花と遠くの山々が幻想的な風景をかもし出します。奥に入ると小魚の投げ縄漁をする漁師たち。観光客も木造船に乗り、ゆったりと湖上遊覧を楽しむことができます。この地には今も語り継がれている有名な伝説があるそうです。ある日、龍の姿をした子どもを授かった夫婦は……。インドネシア各地には地元ならではの伝説がたくさんあるので、旅行の際にはそうした話を現地の人から聞くのも勉強になりますね。

■洞窟をくぐる船
 南東スラウェシ島の秘境ムナ島の観光客にはほとんど知られていないミステリアスな洞窟をくぐる船。普段は海中に隠れた洞窟が目にも鮮やかなエメラルドグリーンの海面に現れ、トンネルが開けるのは干潮時のみ。タイムトンネルのようなその先には想像をはるかに超えた静寂と平和という言葉しか浮かばない、幻想的な海が広がっています。終始寡黙な船頭さんはトンネルの入り口でそっと振り向き頭を抑えるジェスチャーで「キ・ヲ・ツ・ケ・ロ」のサイン。カッコいい海の民でした。

■大河にも船、船、船
 豊富な資源と活気溢れる経済と商業の街、スマトラ島のパレンバンの動脈とも言える大河、ムシ川では重厚な巨大資源運搬船から、庶民の足となる伝統的木造船まで多種多様な船が非常に激しく往来しています。カフェオレ色の水面をおもちゃのように動く船たちの様子はいつまで見ていても飽きません。伝統と発展が入り混じりパワーがみなぎるパレンバンを象徴する光景のひとつです。
 子どもの頃に誰もが歌った「海」の歌詞、「海におふねを浮かばせて、行ってみたいなよその国」。大人になっても旅する人たちの深い潜在意識の中で好奇心を掻き立て、未知なる場所への憧れと希望を抱かせてくれるのも「船」なのかも知れません。紹介したい船は沢山あるのですが、続きはまたいつか。(日本旅行インドネシア 水柿その子 写真も)

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