生きている裸の地球 南東スラウェシ州ムナ島 タイムトンネルを抜けた? (下)
南東スラウェシ州ムナ島。前回(7月6日付)は太古の人の魂に触れる謎の洞窟壁画「リアンコボリ」を紹介しました。今回は、ムナ島の特色と秘境の絶景「ナパバレ」を紹介します。
2万とも呼ばれる島々を領土とするインドネシア。ムナ島は海流や地殻変動の影響を大きく受けながら形成され、現在も変化の過程にある島です。波浪に侵食され今にも崩れそうな複雑な海岸線や岩礁、内陸部にはニョキっとそびえる堆積岩の固まりのようなモノリス(一枚岩)など、独特の生態系が広がります。現代のインドネシアでありながらジャカルタから遠い異国に来たような、遥か昔にさかのぼったような、生きている裸の地球の姿です。
地元の人いわく「お米は長い間お金持ちの食べ物だった」とのことで、ムナ島の庶民にとって古くからの主食はトウモロコシ。内陸部の山岳地帯にあるトウモロコシ畑で、主に栽培されているのは原種に限りなく近いとみられる小さめの品種。糖分控えめのプチプチとした丸い粒で、ゆでトウモロコシやお米と混ぜて炊いたご飯のほか、粉を蒸した「カトゥンブ・ゴラ」「カンベウェ・カプテ」などの伝統食も食べられています。また、豊かな海で獲れる魚も大切な栄養源。シンプルな素焼き魚にトマトたっぷりのサンバルやまろやかなピーナツソースをかけて食べるムナ島流イカン・バカールは日本人の口にも合います。
このように、山も海も魅力的なムナ島の知られざる名スポットのひとつが「ナパバレ」。深い緑に囲まれた宝石のようにまぶしいエメラルドグリーンの水面。小さな船着場から望む景色は絵本の中の湖です。しかしただの湖ではありません。湖と海を隔てる岩壁に長年の侵食でできた海食洞と呼ばれる穴があいていて、実は水中で海とつながっているのです。だからここの水は塩水。色がエメラルドグリーンなのはそのためです。その穴が干潮時にだけ水面上にわずかに顔を出し、小船が通れるほどの自然のトンネル、いわゆる「青の洞窟」を作るのです。
キラキラと光る湖上遊覧。どんどん岩に近付いて行く船。「え? ここ」と一瞬身構えするほどの小さな隙間に入る時には思いっきり身をかがめなければなりません。頭上スレスレの天井。外部からの光が届かなくなると洞窟は一瞬にして真っ暗な闇へ。そして遠くに出口が見えてきたかと思うと、差し込む光に照らされて一気に宇宙空間のようなきらめきに……。もう、言葉を失う美しさです。
トンネルを抜けるとそこはまた別世界。青く透明な海、どこまでも続く小岩の数々を縫うように進む船。無人ビーチや海藻漁の小船など、瞬きをする間も惜しいほどの景色が続くクルーズです。「もしくはこの船はタイムマシンで、あれはタイムトンネルだったのか?」。そんなことさえ思ってしまう異次元的体験。これほど素晴らしい場所もまだ知る人は多くありません。
この世の中は知らないことばかり。知らないことをひとつずつ塗りつぶして少しずつ「知っていること」を増やしていくのが旅(人生)の楽しみでもあり目的でもあり……。知られざる地へ出かけ、そこで得た想像もしていなかった経験は自分だけの一生の財産になるでしょう。さあ、皆さまも未知の世界へ、時間旅行も宇宙旅行までも楽しめるような、とびきり特別なムナ島の旅へ、一緒に出かけましょう。 (日本旅行インドネシア、水柿その子、写真も)
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