【人と世界/manusia dan dunia】 ウミガメの不思議追って エバーラスティング・ネイチャー 西パプアなどでウミガメの保護、調査活動

 西パプア州ソロンから東に150キロの太平洋に面したジャムスルバメディ地区の海岸付近。砂浜へと続く熱帯雨林の中に仕掛けられている簡易な電気柵を修理した。豚が砂浜に近づくのを防ぐためのもので、電力はソーラーパネルにたよる。浜では5月に最大のウミガメのオサガメの産卵最盛期を迎える。
 ウミガメの保全活動、生態調査を行う非営利団体(NPO)エバーラスティング・ネイチャー(ELNA=本部・横浜市)の会長の菅沼弘行さんと職員の井ノ口栄美さん、菅沼さんらが設立したインドネシア・ウミガメ財団の職員ワヒドさんは、今月上旬、ジャカルタからマカッサルで乗り継ぎ飛行機で4時間かけソロンに、そこから海に出てチャーターボートで7時間掛け、ジャムスルバメディ地区にたどり着いた。
 西パプア北岸は太平洋一のオサガメの産卵地。菅沼さんらELNAの職員は、毎年四回ほど調査、保護活動のためにやってくる。電気柵は豚から卵を守るためだ。
 オサガメは甲羅を持たないウミガメ。生態は謎な部分が多い。ジャムスルバメディ地区のオサガメは5月から8月が産卵最盛期だが、30キロしか離れていないウェルモン区は12月から3月。ジャムスルバディで産卵するオサガメはフィリピンから日本に抜けるルートと米国西海岸に行くルートで回遊するが、ウェルモン区のオサガメは豪州、ニュージーランドとインド洋を回遊するルートになるなど不思議が多い。

■ 小笠原からインドネシア
 菅沼さんは1977年、小笠原でウミガメ保護活動に取り組むようになった。小笠原は100年以上前から、人工ふ化を世界に先駆けて行うなどウミガメ保護の先進的地域。
 世界有数のウミガメの産卵地になっているインドネシアでも調査を行うようになっていった。
 1998年にウミガメ調査を行うELNAを設立。バンカ・ブリトゥン州のプスムット島などでべっ甲の原料として乱獲されたタイマイやアオウミガメ、西パプアでオサガメの産卵巣数、卵のふ化率を調査してきた。寿命が長いカメを知るには継続した調査が必要。調査を開始し14年になる島もある。
 卵の監視や調査は地元の人と協力。卵を採取し生計を立てていた人にお金を払い、見張りをしてもらう。住民による卵の採取は格段に減った。
 「人間の活動の影響でウミガメが減っていった。ウミガメは昔から貴重な食料になったり人とのかかわり合いが強い生き物。ゼロにしてはいけない」

■ 「人とかかわらず」
 人工ふ化や安全な場所への移植、稚ガメの放流などは行っていない。卵、稚ガメは繊細で人工ふ化などを行っても結果的にウミガメは増えていかないと考えるからだ。「人間となるべくかかわらないほうがいい」。人工ふ化の先駆けの小笠原で試行錯誤を重ねた結果、菅沼さんがたどり着いた一つの答えだった。
 砂浜に産み落とされた卵はトカゲなどに食べられたり、波をかぶって産卵巣ごと全滅することもある。それでも、自然にしておくことが最良と考える。例外は西パプアの豚。人間が持ち込んで、野生化したからだ。卵は移動させないが、豚に食べられないように手を尽くす。
 調査を通じて人とウミガメの付き合い方を見てきた。西パプアの狩猟を生業とする人々はウミガメの産卵減少を目の当たりにすると、慣習法で採取を控えた。「狩猟で暮らす人々は自然と共存し、自分たちの食料となるものを大切にする。さまざまな場所でその土地の人の習慣を見ることができた」
 ウミガメは大人になるまで数十年掛かる。産卵に来る親ガメが増えるなどの保護活動の成果が目に見えて分かるのはまだ先の話。でも手応えは感じている。自然のままに保護のシステムを確立させようと活動を続けている。
 エバーラスティング・ネイチャーはインドネシア、小笠原などでのウミガメ保護活動を支援する企業会員、個人会員や寄付を募っている。寄付はインターネットからの決済も可能。詳細は同団体ウェブサイト(http://www.elna.or.jp/support/donate.php)に掲載。
 また、6月ごろジャカルタで講演会を行うことを予定している。
 問い合わせは、同団体(メーinfo@elna.or.jp)まで。

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