【投資特集】 進出製造企業の受け皿に 工業団地の活況続く

 円高を背景に現地調達率を高めている自動車、家電などの大手製造業の戦略に合わせ、中小企業が相次いでインドネシアに進出している。進出企業の受け皿となる工業団地は、どこも進出検討企業への対応に追われている。
 工業団地は、日本の商社や建設会社などが運営し、電力や水処理などのインフラを整備した方式。一九九〇年代初めの進出ラッシュに合わせ、どんどん増え始め、現在はジャカルタから東に伸びるチカンペック高速道路沿いに約二十カ所が集まり、製造業の一大集積地となっている。
 近年の好調な経済成長を背景に、大半の工業団地はすでに満杯。新規進出企業の土地確保が難しくなっているのが現状で、運営側は造成を急いでいる。
 豊田通商は、用地を確保し、事務系業務の支援を行うことで、生産に専念できる環境を提供する「テクノ・パーク事業」を立ち上げ、昨年八月にジャカルタ郊外のミトラ・カラワン工業団地で十五ヘクタールの土地取得を発表した。一・三ヘクタールの建屋を八棟建設予定で、建屋を小さく区切ったレンタル工場を提供する。すでに八棟のうち五棟が契約済みだ。

■ 「23万人都市目指す」
 双日と大手財閥のシナールマスが運営する西ジャワ州ブカシ県の工業団地「グリーンランド・インターナショナル・インダストリアル・センター(GIIC)」は、一九九六年と設立時期が新しいこともあり、スペースにまだ余裕がある。
 ジャカルタから東へ三十七キロ。約三千ヘクタールの総開発面積で、住宅、商業施設、工業団地の複合都市開発が進められている。日系を中心に外資系企業の進出が相次いだことから、昨年九月に工業団地の用地拡大を行った。
 GIICを管理・運営するプラデルタ・レスタリ社の余根田紳次社長は「昨年一月ごろから、問い合わせが増え始め、昨年GIICに視察に来た企業は三百社を超える」と活況ぶりを語る。
 進出企業で特に多いのは自動車部品会社という。昨年過去最高の八十九万台を記録したインドネシアの自動車市場のさらなる拡大を見込んでいるほか、震災後のサプライチェーンの見直しや円高の影響で、自動車大手が次々と生産拡張に乗り出した。
 インドネシア政府が現在、低価格・低燃費「エコカー」向けの税制優遇策の策定を進めていることも拡張投資や部品供給企業の進出を後押ししている。
 「タイに進出済みの企業が、新たにインドネシアで工場を設立するケースが目立つ。インドネシアで走る自動車の部品は、まだまだタイ製が多い。自動車市場が百万台を超えると部品会社にチャンスが出ると言われている」と余根田社長。
 計千三百ヘクタールの工業団地の用地のうち、約四百五十ヘクタールが完売。自動車部品大手のタカタ、フタバ産業、シロキ工業などをはじめ、昨年一年間で、約三十五社がGIICでの工場建設を決めた。
 GIICは二十三万人の総合都市を目指している。インドネシアでは理系随一のバンドン工科大学(ITB)の誘致が決まっているほか、ブカシ県庁舎や日本食レストラン、銀行、郵便局などが整備されている。一階、二階合わせて百平米の事務所のレンタルは年間約五十万円から。ショッピングモールの誘致も予定している。
 双日は先月三十日、現地法人の設立から、工場建設、各種許認可に至るまで、進出企業にとって負担の大きい申請・手続きを支援するサービスの開始を発表した。今年三十―五十件程度の成約を見込んでいる。

■ 人材育成に着手
 九〇年九月に運営を開始した、西ジャワ州ブカシ県チビトゥンにある丸紅系の工業団地「MM2100」の地元パートナーを務めるブカシ・ファジャール・インダストリアル・エステート社も拡張を計画している。
 MM2100を管理・運営するメガロポリス・マヌンガル・インダストリアル・ディベロップメント社(MMID)の小尾吉弘社長は「順調に進めば、年内にも引き渡しができる状態になるだろう」と話す。
 MM2100とブカシ・ファジャールを合わせた現在の総面積は千百ヘクタール。今回の造成計画は五十ヘクタールだが、すでに三百ヘクタール近くの許可は保有しており、今後さらに広げていきたいと意気込む。
 工業団地が活況を呈するのに合わせ、土地代の高騰のほか、人材確保も大きな課題となっている。進出企業が増えるにつれ、人材の引き抜きなども頻繁に見られるようになる中、MMID社は団地内に工業高校を建設する計画だ。今年七月に仮校舎で開校し、最初は三クラス百人ほどの生徒でのスタートを見込む。企業の協力も得て、企業のニーズに合ったカリキュラムを作成し、卒業後はすぐに入居企業などの生産現場で能力が発揮できるような人材の輩出を目指す。
 丸紅入社翌年の八三年からインドネシア事業に関わり、MM2100の設立にも奔走してきた小尾社長は「お世話になったインドネシアへのお礼という意味でも、この学校がモデル校となり、全国に同じような取り組みが進んでいくようにしていきたい」と力を込めた。

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