【スナン・スナン】ワヤン・オランを楽しむ ジャワの伝統演劇

 ガムランの響きに乗せ、きらびやか衣装をまとった人が舞う。客席では大人から子どもまで、ジュースを飲んだりガドガドの出前を食べながら劇を楽しんでいる。ワヤン・オランを観た。ジャワの伝統演劇の舞台にはどこか懐かしい空気が漂っていた。
 中央ジャカルタ・スネンにある劇場「BHARATA(バラタ)」はジャカルタ特別州でただ1軒のワヤン・オランの常設劇場だ。公演は毎週土曜夜9時から12時まで。客席は約300で1、2階に分かれている。入場料は4万〜6万ルピア。古代インドの叙事詩「マハーバーラタ」と「ラーマーヤナ」の一部を上演する。
 この日の演目は「マハーバーラタ」の一節。正義の王子が悪と戦うストーリーは歌あり踊りありの活劇風。「マハーバーラタは話が分かりやすく笑いが多い。深淵なラーマーヤナと対照的です」とワヤン・オランに詳しいデザイナーのミタさん。中部ジャワ独特のゆったりとした動きが特長的だ。
 ワヤンには影絵人形を用いる「ワヤン・クリット」と木彫りの人形を用いる「ワヤン・ゴレット」、そして人が演じる「ワヤン・オラン」などがある。人が演じる分初めて見る日本人でも物語が分かりやすい。総勢約60人が登場する舞台は歌舞伎のようでもあり、劇場全体の雰囲気は気取らない大衆演劇に近い。
 家族と親類14人で観劇に来た会社経営のスリ・ワフユニさんは「ワヤン・オランには人生の希望や人間がどう生きるかが詰まっている。物語が分からない子どもでもずっと観ていれば何か感じるはず」と話す。劇団の中心メンバーで自らも舞台に立つキス・スラメットさん(74)は若い世代の観客が減った、と嘆くが「ワヤンはインドネシアの伝統文化、ずっと続くものだ」と語る。同氏によると日本人も含めて外国人の観客はほとんどいないという。劇場ではかしこまらずにリラックスして観ることができる。ガムランの音や演者の表情がすぐ近くで感じられる楽しい空間は、インドネシアの文化に触れられる良い機会になるのではないか。(阿部敬一、写真も)

「素敵な時間が過ごせます」
 日本でワヤン・クリットの公演を続ける「クルタクルティ」代表の加清明子さんの話
 ガムランの音、華やかな衣装と巧みな踊り、笑いあり立ち回りあり。ワヤン・オランは懐の深いジャワ文化が凝縮されたエンターテインメント。異国情緒たっぷりだけど、どこか懐かしい。世界文化遺産に登録されているワヤン・クリットは徹夜で7〜8時間の上演ですがワヤン・オランは3時間という短さ。次々と物語が進んでいくので日本人にはなじみやすい。たとえ言葉が分からなくても、その姿としぐさを見るだけで思わず笑っちゃうような道化も登場します。

「ワヤン・オラン バラタ」
中央ジャカルタ・スネンのカリリオ通リ
☎ 021−424−4442

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