【テーマ2014選挙】(2)貧困率目標達成できず 現政権

 ユドヨノ大統領は就任以来、さまざまな対策を打ち出した。コメ助成「ラスキン」▽低所得世帯補助金(PKH)▽貧困層向け医療保険(ジャムケスマス)▽雇用創出目的で地方自治体に開発資金支給▽屋台など零細経営への少額融資。
 しかし政策の実行段階で問題が生じるケースが目立った。補助金付き燃料値上げの補償策の一つ、貧困世帯への直接現金給付(昨年6月)では、全国1550万世帯に月15万ルピアを4カ月分給付したが、受給者選定方法や支給遅れが問題となった。南ジャカルタ在住、無職のヤネウシさん(80)のように子どもの仕送り月80万ルピアで暮らすが「高価な携帯電話を持つ人がもらえ、なぜ私にはないのか」と嘆く人も出た。
 貧しい人を雇用している中小、零細企業への無担保融資は09年から国営ラクヤット・インドネシア銀行など6行と協力して始まったが、13年12月初旬時点で資金約400兆ルピアのうち融資したのは約4割にとどまる。各種証明書の提示を求めるなど、銀行の審査が厳しいためだが、銀行側からいえば、身元がはっきりしていないと貸金を回収できない恐れが出てくる。
 貧困家庭の子どもたち向けの奨学金制度もつくり、小学生には1人年間約45万ルピアを支給し、一定の効果を上げたという。
 ジャムケスマスでは受給者から効果を感じにくいとの声も出た。高額な薬代のため医療費が依然高いからだ。地方の医者不足という医療格差も残る。
 10年に副大統領府に「特別貧困撲滅チーム」を設置し、省庁間の連携向上を図っている。
 04〜09年の中期国家開発計画は04年の貧困率17.42%を09年までに8.20%に下げるとしたが、09年の貧困率は14.15%。10〜14年の同開発計画は貧困率8%を目標としたが、世銀は昨年12月、達成困難の観測を出した。ユドヨノ大統領は多くの手を打ったが、効果は今ひとつだった。
■通貨危機後が原型
 1976年時点の貧困率が40.1%(5420万人)と高く、政策で貧困層に的を絞るには多過ぎたため、スハルト政権は国家の経済発展に伴い貧困層も減少するとの立場を取った。
 確かに70年代から年平均7%の高い経済成長を記録し、平均寿命や就学率が向上、基礎的なインフラ整備も進んだ。その結果、76年からの20年間に人口が約1億3500万人から2億人に増えた一方、貧困層は5400万人から2250万人に減少した。
 だが97年のアジア通貨危機で貧困層が急増。99年3月に貧困率が23.4%を記録し都市部では倍増した。政府は世銀などの支援を受け、食糧・就学支援や健康保険、雇用創出など社会保障政策を実施し、後の貧困対策の原型となった。
■候補予定者たちは
 大統領選の候補者と目される人たちはさまざまな貧困対策を掲げる。バクリー・ゴルカル党党首はスンバコ(コメなど九つの生活必需品)価格の安定を掲げ、プラボウォ・グリンドラ党最高顧問は農村への所得再分配を提唱する。
 ジャカルタ特別州のジョコウィ知事はカンプン(下町)住民との対話を重ね、12年に低所得者向け無料医療サービス制度「ジャカルタ保健カード(KJS)」を導入。「ジョコウィのおかげで、病気になっても安心だ」と商人のフィキさん(20)は喜ぶ。患者が急増し、たらい回しや医師の過重負担などの問題が続出したが、直接恩恵を感じられる政策に貧困層の強い支持が集まった。
このように、国民の目に見える形で貧困対策を進めることが大事ではないか。鋭い現場感覚で貧困層の要望をすくい上げてほしい。(宮平麻里子)

貧困率 
貧困の基準をどこに置くかで貧困率は増えもするし減りもする。中央統計局(BPS)は1カ月の生活費(食費、住居費、教育費など)29万2951ルピア(2013年9月時点)以下を貧困層とし、同時点で国民の11.47%。しかし、世界銀行は1日2ドル以下で生活する人を貧困としており、その基準では貧困率は約5割になる。

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