【テーマ2014選挙】(4)収賄資金没収の仕組みを 汚職 (2014年01月07日)

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 与党党首から司法のトップ、知事、検事まで汚職容疑に問われているインドネシア。民主化15年を経てもはびこる宿痾(しゅくあ)をどうすればいいか。

■政権党の汚職

 ボゴール山中のハンバラン複合スポーツ施設は建設工事が中断し、すっかり荒廃している。総工費2兆5千億ルピア(約220億円)の約40億円が「国家の損失」と発表されており、施設から西に4キロの展示場で開かれた10年の民主党党首選での買収工作に使われた疑いが濃厚で、汚職撲滅委員会(KPK)の捜査が進む。
 その民主党はもともとワヒド、メガワティ両氏に対する失望後に、新たにレフォルマシ(改革)を担う勢力とみなされていた。ユドヨノ氏が大統領に初当選した04年のテレビCMは、高らかにうたう、「汚職にいいえと言え!」。KPK活躍の環境を作ったのはユドヨノ政権の手柄だが、その政党が汚職まみれだったとは!
 30年に及ぶスハルト独裁政権の時代は、スハルト氏とその周辺だけが汚職を楽しんだ。同氏の不正蓄財の推定額は150億〜350億ドル(約3兆6500億円)。民主化した改革時代は、権限が地方に移るなど地方分権化の影響で収賄する公務員を1人から多数へと劇的に増加させた。多様な民族、宗教を糾合した群島国家はまるで汚職の海に浮かんでいるようだ。

■選挙に莫大な金
 16年目の民主主義は恐ろしく金を食う。改正政党法は政党に34州、約380県市以上、約3400郡以上に地方支部をつくることを定めた。支部は中央のカネに頼るから、党本部は支部運営に莫大な政治資金を準備しなければならない。地方、中央の議員に立候補する際の負担も大きい。非公式の上納金を党に払ったり選挙運動の活動費などで10億ルピア(約900万円)〜50億ルピアがかかると言われる。だが、任期5年間の報酬はこれを下回る。議員は投入した資金を汚職で回収したくなる。
 しかも前回総選挙から非拘束名簿方式が導入され、政党から個人への投票に変わったため宣伝費用がかさむ。落選で「かけ金」を失いたくないから際限なくカネを投入する傾向もある。闘争民主党は国会議員の場合、候補1人当たりの平均選挙資金は09年の33億ルピア(約3千万円)から、今年は45億ルピアに増えると予測している。

■KPKの奮闘、世論の応援
 1999年汚職撲滅法が、02年KPK法が成立。メガワティ政権の03年に大型汚職事件専門の捜査機関、KPKが発足した。ユドヨノ政権の当初のバックアップもあって汚職摘発は格段に強化された。しかし警察、検察などの既存の捜査機関や国会からの反撃は強烈だった。例えば、不透明な司法手続きで現職のKPK委員長が実業家殺人事件で警察に逮捕され有罪判決を受けたアンタサリ事件(再々審請求中)。続いて国家警察がKPK副委員長2人も収賄などの容疑で逮捕した(えん罪と判明し釈放された)ときは、KPK庁舎はKPKを支持するデモ隊で埋まった。新聞、フェイスブックにもKPK支持が溢れた。KPK法は17回の違憲立法審査にもさらされている。最高裁が09年に各県市の裁判所にも汚職特別法廷設置を認めたため、一部の地方で無罪が頻発し、判事にも汚職疑惑が持ち上がることもある。一種の抜け道であろう。

■金の流れを透明に
 汚職特別法廷で「極めて高い有罪率」を維持しているKPK。資金洗浄を監視する金融取引報告分析センター(PPATK)も04年に誕生。10年の反資金洗浄法成立で、PPATKの得た不正資金の情報を警察、検察だけではなくKPKに渡せるようになり、資金洗浄でもKPKの捜査権が強められた。
 中央、地方政府に電子予算システム、電子調達システムの導入が始まったが、現金でのやりとりを止め、銀行口座の利用で記録が残るから、職員による便宜供与は困難になる。
 政党の地方支部設置要件の緩和、非拘束名簿方式の廃止、選挙運動費用を制限し透明化するなどの方策も有効ではないか。PPATKが提唱する「有罪判決を必要としない資産没収」が画期的だ。判決前に収賄資金を海外口座に移す例が多かったが、それを防ぐことができる。 (吉田拓史)

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ハンバラン競技場汚職事件に関する聴取のため、KPKに出頭するアナス民主党前党首=昨年6月27日、アンタラ通信
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