【人と世界】 草の根で日本留学支援 バンドン在住・大山真由己さん

 日本に留学したい学生はたくさんいる。だが大学や専門学校などの情報も少なく、手続きも複雑。途中で挫折してしまう場合が多い。留学コンサルタントの大山真由己さん(40)は「留学を支援するビジネスが普及すれば、もっと学生を送り出せる」と強調する。
 インドネシア人の夫との結婚を機に、西ジャワ州バンドンに移住して約10年が経った2011年。日本への技能実習生を送り出す機関で働いていた際に、留学フェアで大学関係者と出会った。「留学生を支援する仕事に可能性がある」と感じた。そこで市内の留学仲介業者を訪ね歩いたが、専門業者は皆無。「日本留学希望者は多いのに、入学手続きをするコンサルタントがいないことに驚いた」
 「それなら自分でやってみよう」。バンドンではまだ留学フェアも少ない。同年5月にバンドン工科大(ITB)であった「国際化拠点整備事業(グローバル30)フェア」では、「留学コンサルタント」の肩書きで名刺を配り、大学関係者にあいさつした。来場した学生にも「留学のことで相談してね」と声を掛けて回った。
 7月にはITBで教える夫とともに日本留学の支援組織「ジャパン・インドネシア・ネットワーク(JIN)」を設立。すぐにウェブサイトやフェイスブックのページも開設した。バンドンで留学支援していた邦人とともに留学セミナーも開いた。
■基礎情報の普及
 インドネシアの学生や保護者が必要としているものは何か。奨学金などに関する正確な情報の収集にも力を入れる。「文部科学省の奨学金でしか行けない」「生活費はとても高い」との意識は根強い。セミナーでは授業料の減免制度、バイトの収入を数字で提示。留学への先入観を取り払うことに注力している。
 今年4月にはバンドンとジャカルタで、日本語学校情報を提供する情報誌「キュート・ジャポン」と留学フェアを共催。「実績は無いが、インドネシアからの留学生が増える可能性を信じてください」と売り込んだ努力が実った。
 セミナーは盛況だったが、会場では学生からの同じ質問に応える担当者たちの姿が目立った。「事前に基礎情報を得た上で、セミナーではカリキュラムや専攻内容を吟味して学校を選ぶことが重要だと痛感した」
 この経験から、入学手続きや学費など基礎的な留学情報にニーズがあると判断。3月に開いたセミナーは好評で、参加した学生2人が日本留学を決めるなど手応えをつかんだ。
 9月にジャカルタ、11月にはバンドンでもセミナーを開いた。20人規模の小さいセミナー。希望者との相談時間では一から丁寧に教える。12月にはバリ州デンパサールで開催する予定だ。
 学生や留学関係者へ聞き取りした結果、留学情報の宣伝不足も感じている。バンドン市内の大学や高校で開かれる文化祭でのチラシ配り、希望者にダイレクトメールを送るなどして認知度の向上に力を注ぐ。
■明るい未来像を
 「留学コンサルタントをビジネスとして成り立たせる」。かつて日本留学のコンサルタントに取り組んだ人は、ビジネスが軌道に乗らず経営がひっ迫し撤退した。
 一人で留学生は増やせない。インドネシア人でも日本人でも、ビジネスとして手掛けるコンサルタントが増えることで日本留学は活性化する。豪州など、インドネシア各地にいるコンサルタントの力で留学生数を飛躍的に伸ばす。
 「裾野で質の良い情報をインドネシア人に提供する人材が不可欠。インドネシアの若者が日本の教育を受け、明るい未来を描けるようになってほしい」と意欲を新たにしている。(小塩航大)

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