【雪国のインドネシア人】(下) 実験棟に礼拝スペース 留学生団結、募金活動

 白いダウンジャケット、マフラー、ジルバブ姿の留学生、プスピタニングラム・エスティさん(二三)は玄関を出た。「水道凍結注意」とアパートの壁に張り紙。この日の札幌は晴れていたが、気温は氷点下。吐息が白い。

 ◇ ◇ ◇ ◇
 エスティさんは中部ジャワ州ブロラ県生まれ。文部科学省が助成する留学プログラムで、北海道大学大学院工学研究科に在籍している。将来は母校ガジャマダ大学で教師として働きたいと考えている。現在は今年秋の帰国に向け、修士論文に取り掛かっている。
 北大に通うインドネシア人は四十三人(二〇〇九年五月現在)。中国、韓国人に次ぐ多さだ。
 留学してすぐ、礼拝する場所に困った。静かで一人になれる場所を探した。そんなとき助けてくれたのが研究室のメンバーと担当教授。実験棟の一室の一角に礼拝スペースを作ってくれた。
 「日本人はとても礼儀正しいし、優しい。日本が大好きになった」と話すエスティさんは、大学生活を満喫しているという。
 留学生同士のつながりも強い。北大の学生などでつくる札幌のインドネシア留学生協会は、昨年九月三十日に発生し、千百九十五人が死亡したパダン沖地震の募金活動のため、アンクロンなどのチャリティーコンサートを通じて寄付を呼び掛けた。日本の友人や大学生、モスクを訪れたムスリムから約九十二万円の寄付があった。
 イスラムの勉強会(プンガジアン)が月に一度、欠かさず開かれる。札幌近郊に住むインドネシア人留学生やその家族のほか、社会人なども一堂に会する。
 「ピンポーン」。冬用のつなぎを着た娘たちを連れて来たレフィ・オクタフィアナさん(三六)。夫が留学生で、日本に来て三年になる。一番下の娘は一歳。昨年、北海道で生まれた道産子だ。
 雪国でのプンガジアン。持ち寄ったジュースを囲み、異国での暮らしに話は絶えず、笑顔があふれる。みんなで集まって心を暖め合えば、北国での暮らしもちっとも寒くないようだ。(おわり)

おすすめ過去記事 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly