【雪国のインドネシア人】(中) 惜しまず経験伝える 同郷の絆、商売にも

 「いってらっしゃい、お父さん」
 一月二十三日早朝、会社に向かう一家の大黒柱を、今年小学校に上がる隼輝(はやき)くん(六)と日本人の妻が見送った。昨年購入したアパートの玄関口には長靴が並び、ソリが立て掛けられている。

◇ ◇ ◇ ◇
 厚手のジャケットを着込んだシトゥモラン・サハッ・ドラスさん(二七)。バリ島で日本語の観光ガイドとして働いていたときに日本人の女性と結婚し、札幌に来た。しかし、家族を養っていくのは、難しかった。見つかる仕事と言えば、マッサージ店の従業員や警備員、派遣社員。不景気の札幌で、金を稼ぐには自分で仕事を生み出すしかないと思った。
 助けてくれたのは、札幌のインドネシア料理店「ワルン・ジャワ」で出会った友人たち。中古タイヤの買い取り、輸出販売のノウハウを教わった。解体工場を経営するパキスタン人から土地の一角を借り、古物商の許可も取得し、細々と事業を開始。株式会社を二〇〇八年、設立した。
 職場に向かう前に、実習生として働くイルファンさん(二五)を近くの駅まで迎えに行った。イルファンさんはバリ島でダイビングのインストラクターをしていた現在の妻と出会い結婚、北海道にやって来た。サハッさんと同じように、起業することが夢だ。実習を始めて二カ月が経つ。
 サハッさんの仕事は、中古のタイヤを買い取って、ロシアや香港へ輸出するものだ。中古車店やガソリンスタンド、ディーラー、解体業者を回り、タイヤを買い取る。それに利益をのせて、小樽港に着いたロシア船の販売業者や海外の顧客に販売する。一カ月に数千本をさばく。
 「札幌に来たインドネシア人を皆で温かく迎えて支援します。イルファンはいつか独立するでしょうけれど、協力して仕事もしたい」
 サハッさんは日本でのさまざまな経験や情報を惜しまず伝えている。同郷同士のきずなが札幌に住むインドネシア人たちの力の源だ。(つづく=【雪国のインドネシア人】(下))

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