ルピア金利・為替シナリオ

 2024年はどんな一年になるだろうか。様々なメディアやリサーチ機関が今年のグローバルベースの政治・経済予想を発表しているが、概ね「選挙イヤー」やインフレ後の「経済のソフトランディング」といったトピックが並ぶ。ただ近年、戦争やパンデミック、自然災害といった突発性の高い事象も相次いでいるので、一年単位の予測自体が難しくなってきていることも念頭に置いておいた方がよいかもしれない。
 インドネシア・ルピアの金利や為替はどのようになるだろうか。もちろん突発的な外的要因によって前提が一変することはあるのだが、とは言っても年の前半ぐらいまでは一定の視界を持って見通すことができるのではないかと考えている。
 よく引き合いに出される大統領選挙は、これまでの展開を見ると、よほどの混乱がない限りはあまりルピア市場には影響しないと考えられる(混乱なく正副大統領が選出されればルピア為替には多少ポジティブに働く可能性はある)。
 当面のルピアを左右する一番大きなドライバーは、米国のインフレ沈静化とドル利下げのペースということになろう。昨年11月以降に発表された米国のインフレ率は低下傾向が鮮明となり、これを受けてドルの長期金利も下落、12月には米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長から利下げが視野に入り始めたとの発言も出た。おそらくこのタイミングで為替相場は転換点を迎え、ドル安方向へのトレンドが生まれたと言える。今後のドルの利下げ開始時期についてはまだいろいろな見方が錯綜していて、当のFRBも態度を明確にしていないが、現時点での市場の予想は早ければ今年3月、慎重派の予想だと6月以降、といったところだ。
 今後ルピアの金利と為替もこのドルの利下げに影響される動きが予想されるが、展開としては2通りのシナリオが考えられる。
 一つ目は楽観シナリオ。ドルの利下げ(ないしはその兆候)にルピア為替が強含む又は安定推移する場合には、インドネシア中銀は安心して利下げに踏み切ることができる。このサイクルが何度か繰り返されて、為替の安定が利下げをサポートし続ければ、ルピアの政策金利はドル金利と軌道を一にしてほぼ同水準まで下げていくことができる。為替水準もややルピア高方向、場合によっては1ドル14000台も想定されよう。
 二つ目の悲観シナリオはどうか。ドルの利下げにルピアがうまく反応しない、つまり弱含んだり、不安定な動きをする、といったケースだ。この状況が続くと、中銀は利下げに踏み切れず、為替が不安定な中で高金利を続けざるを得ない。昨年後半から資源価格の一服感もあり経常収支が赤字化、為替の実需もルピア買い一辺倒とはなりにくい中、昨年11月以降のドル安トレンドでもルピア為替の戻りは相対的に鈍かった。この傾向が加速してしまうようなことがあると、ルピア金利は下げ幅を限定され、為替も今と同水準かむしろ更にルピア安になり得る。
 今のところは一つ目の楽観シナリオの方が可能性としては高いだろうし、中銀もある程度ルピア為替が安定推移していればドルに合わせて利下げに踏み切る可能性が高い。ただ楽観と悲観のどちらのシナリオに寄っていくかは、これから先、3月ぐらいに向けて、ドル利下げに関する動きにルピア為替がどう反応するかで、よりクリアに見えてくるのではないかと考えている。(三菱UFJ銀行ジャカルタ支店長 中島和重)

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