全国各地、花火で祝う 新年賑やかに迎える

 新年の幕開けとなった一日、一部地域では洪水被害なども報告されたが、インドネシアではおおむね二〇一二年を祝うイベントが平穏に行われた。二〇一一年はASEAN(東南アジア諸国連合)議長国を務め、SEAゲーム(東南アジア選手権大会)の開催国となるなど、話題にこと欠かなかったインドネシア。市民が盛大に祝う姿は今後のインドネシアの一層の発展を期待しているかのようだった。

■動物園に10万人-ジャカルタ
 どんよりとした曇り空のジャカルタ。それでも午後五時ごろから大勢の人々がホテル・インドネシア前ロータリーに集まり、午後十一時には新年を祝う人々で埋め尽くされた。路上に新聞紙やゴザを敷き、新年を待つ家族や、オートバイにまたがり、紙ラッパを吹きながら、家族や友人と過ごす市民で、タムリン、スディルマン通りは車は全く動かず大渋滞となった。
 午前零時五分前。それまでは断続的だった花火が突如、無数に打ち出された。紙ラッパと車のクラクション、花火の音、人々の歓声が折り重なり、盛り上がりは最高潮となった。ホテルインドネシア前の歩道橋で娘四人と新聞紙を敷いて年明けの花火を待っていたアンドリさんは「娘が新しく中学生になったんだ。この盛り上がりを見て、家族のために今年も頑張るよ」と子どもたちが必死に紙ラッパを吹く姿に目を細めていた。
 ジャカルタ近郊の行楽地は当日のぐずついた天気にも関わらず、大勢の人々が訪れた。
 南ジャカルタのラグナン動物園には一日午後二時の時点で、約十万人が来園。周辺道路は激しい渋滞となり、トランスジャカルタも臨時の出入り口を設けた。
 東ジャカルタのタマン・ミニ・インドネシア・インダ(TMII)でも同日、約十万人が来場。
 北ジャカルタのアンチョール公園内にある遊園地「ドゥニア・ファンタシ」には五万人が訪れ、アンチョール公園では約三十万人が新年の晴れやかな雰囲気を楽しんだ。(高橋佳久)

■マリオボロで歓声-ジョクジャカルタ
 ジョクジャカルタ市街地では十二月三十一日午後七時から深夜まで目抜き通りのマリオボロ通り周辺道路で乗用車の通行が禁止され、年越しを祝おうとする市民や観光客が押し寄せた。道路は、オートバイと人で埋めつくされ、人混みの中からふいに、打ち上げ花火が上がった。
 年が変わる直前には、ジョクジャカルタ特別州主催の伝統舞踊を披露するイベントも開かれ、周辺は市民が街のあちこちで上げる打ち上げ花火で彩られた。
 観光客はベチャ(人力車)から空を見上げながら、ラッパの音を聞き、新年を迎えるとカップルや家族が一斉に歓声を上げた。
 マリオボロ通りにつながる大通りでは、花火の大きな音と同時に、建物からコウモリが一斉に飛び出し、煙の中を舞う姿があり、市民も驚きの顔を見せていた。(米澤勇輝)

■色とりどりの花火-チルボン
 西ジャワ州チルボンでは、午後十一時ごろから中心部のショッピングモールの駐車場から花火が打ち上げられた。幹線道路の出入り口には警官や警備隊が立ち、車両の進入を制限。「十二時から集団礼拝を行うから」と説明したが、通りには普段着の人々が座り込んで、煙立つ空に釘付け。色とりどりの花火に熱中になり、花火の音に合わせて歓声や紙ラッパが響いた。
 大通りは、オートバイやベチャに乗った市民数百人が、携帯やカメラを宙にかざして花火を撮影。花火が終わると、人々はうれしそうにオートバイのクラクションやエンジン音、紙ラッパの音を響かせて新年を祝った。オートバイに立ち乗りするなどして疾走する若者も目立った。(堀田実希)

■虎ファン登場-マカッサル
 「リマ・リブ(五千ルピア)、リマ・リブ。どれも全部リマ・リブだよ。さあ買った、買った」
 南スラウェシ州マカッサル、ロサリ・ビーチの露店には阪神タイガースファンと思しき売り子が現れた。髪飾り、指輪などのアクセサリーを売るリザルさん(四二)はユニフォームについて「パサールで買ったんだ。中古品だけど新品同様さ。たぶん、日本からの輸入品だよ」とお気に入りの様子。「阪神タイガースが何か知っているか」と質問すると、「ハリマオ(虎)だろ」と満面の笑み。ユニフォームのおかげか、リザルさんの店は大繁盛していた。
 大晦日、ロサリ・ビーチ周辺は歩行者天国となり、露店二百店、カキリマ(屋台)百台が並んだ。年越しには市民数万人が集まり、もみ合いになりながら花火を楽しんだ。(吉田拓史)

■地酒で年越し-バリ
 暗くなると同時に雨が止んだデンパサール。「待ってました!」といわんばかりに、子どもたちが表に飛び出し、次々に花火に火をつけた。花火による事故が相次いでいることを受けて、デンパサールの慣習村評議会は花火禁止令を出していたが、路地裏はすでに煙と火薬の臭いでいっぱいだ。「年が明けた」の合図で、それまで座って見ていた大人たちも花火を一斉に飛ばし、たまたま通りすがった私にも「おめでとう」と握手を求めてきた。この間、街角では屋外に大型スピーカーを設置して音楽や飲食を楽しむ若者、自宅からカラオケの機材を持ち出して家族で歌う人々もいた。
 一方、在住邦人の多いウブドではビラ・ビンタンで毎年恒例のカウントダウン・パーティーがバリ人らを交えて開かれ、地酒のアラックをベースにしたカクテルやジェゴグ(竹のガムラン)を楽しみながら新年を迎えた。(北井香織)

■津波後に変わった-バンダアチェ
 銃撃事件続発など治安悪化が伝えられるアチェ州だが、大晦日、州都バンダアチェの中心部は市民で溢れかえった。道端には紙ラッパや花火を売る露天商が並んでいた。
 新年を迎える三十分前。通りは人や車、オートバイで身動きが取れなくなった。家族連れや若いカップルの姿も多く、女性たちは皆ジルバブ(スカーフ)を身につけていた。
 大通りの向こうで花火が上がる。「ぱあん」と乾いた音が空に響く。花火が上がる度に大きな歓声が上がる。「以前はこんな習慣はなかった。昔だったらこんな風に騒いだり、若いカップルが夜に出歩いていたら警察に捕まった。女性が夜に出歩くのも禁止されていた。すべては津波以降にできた習慣だよ。アチェではいろんなものが変わったんだ」とアチェ人のロミアディさん(二二)は話してくれた。
 復興支援で外から多くの人々がアチェを訪れた。この過程で、アチェの人々の意識も変わっていったのだという。花火を見上げていたらいつの間にか年が明けていた。(小池直)














マカッサルのロサリ・ビーチ周辺は歩行者天国になり、子どもたちも打ち上げ花火を楽しんだ


ユニークな動きで客を楽しませるリザルさん(中央、阪神タイガースユニフォーム)


バンダアチェ中心部にはオートバイや車が繰り出し、身動きが取れなくなった

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