続く冠水、首都で被害拡大 

◇水没で側溝に落ちる危険 チャワンで2m冠水
 記者は東ジャカルタ・チャワンに18日、午後5時に到着した。大通りから脇道に入ると上り坂で、斜面にはオートバイが並んでおり、雨上がり、住民たちがカキリマ(移動式屋台)やワルン(食堂)で夕食を取る姿もあった。
 住民のコマルディンさん(53)。坂の途中に自宅があり、冠水はしていないという。洪水は同日の午前8時から始まり、水かさは2メートル以上。コマルディンさんによれば、冠水したのは約180世帯で、同区ビダラチナにある体育館で避難生活を送っている。
 水かさの低い所では、水の掛け合いをして遊んでいる子どもたちや携帯電話で冠水した町の写真を撮っていた若者にすれ違う。初めは記者のくるぶしまでだった水かさが、チリウン川に近づくにつれ、腹部まで達した。水はミルクを入れたコーヒーのような色だ。足元が見えず、浮力で体が浮き上がり、なかなか前には進めない。 
 路地裏に入ると、街灯から街灯に付けられたロープにつかまりながら、人々が行き交っていた。一階部分が浸水した家屋の二階にはまだ老人や子どもたちが住んでいるのが見えた。「しっかりと私の後ろについてくるように」と市民警備隊の男性。通りの中央を歩かなければ、左右の側溝に落ちる。各地で側溝に落ち、犠牲者が出た。見えない危険が至るところにあることを実感し、足がすくんだ。「今夜、再び雨が降ったら、さらに水かさが増す」。コマルディンさんは顔をしかめて言った。(山本康行)

◇路面の「仮設住宅」25人 「避難生活は日常」
 18日午後8時、洪水がひどい東ジャカルタ・カンプン・ムラユの西ジャティヌガラ通りに到着するやいなや大雨に。ジェフリーさん(38)が親戚と暮らす「仮設住宅」に案内してくれた。
 路肩にかけられたビニールシートの中で家族は生活する。通りに面した建物からシートを伸ばし、地面に固定すると三角の空間ができあがる。縦・奥行き2メートル、横10メートルの空間に子どもを含む25人が寝る。一家の家屋は4メートル浸水しており、路面生活も今日で6日目だ。「この定位置に家をつくるのも3年連続だ」という。
 午後11時になっても雨はやむどころか激しさを増してきた。「泊まっていけ」との言葉に甘え、横になる。目の前で雨粒がシートに当たって弾ける音。雷鳴。下はコンクリートにシートを引いただけ。毛布はない。全く寝付けなかった。
 ジェフリーさんは「避難生活は日常」と話す。「秘密基地」での生活に興奮気味だった子どもたちは、文句の一つも出さず、寝息を立てていた。(堀之内健史)

◇沈むタナアバンの線路
 「また始まった。この地域も洪水で沈んでいく」―。中央ジャカルタ・タナアバン駅の上空に掛かる高架橋。オートバイを止め、チリウン川から同駅へ流れる水で冠水する線路を見下ろすアルトヨさん(35)。 
 19日時点で、同駅の9、11、12番線ホーム横の線路が約10センチほど冠水している。チリウン川に隣接する6番線ホームでは約20センチ。同駅発西ジャワ州ボゴール行き、同州ブカシ行きの電車に遅れが続出。ホームを変更するなどして対応している。昨年1月の大洪水では同駅は150センチの冠水で運行を取り止めた。
 アルトヨさんは「一体いつまで洪水と付き合っていくんだ」と嘆いた。

◇高速道路走るオートバイ
 北ジャカルタ・プルンパンの高速道路出入り口では、ヘルメット姿の運転手が乗ったオートバイが勢い良く高速道路へ乗り入れる。野菜を積んだオートバイ、ジルバブ(スカーフ)をかぶった女性を乗せたオジェック(バイクタクシー)が四輪車と並列で走る。
 12日から降り続いた大雨で中央ジャカルタのチュンパカ・プティと北ジャカルタのプルンパンを結ぶ道路が完全に冠水し通行止めになり、北ジャカルタ署はオートバイに高速道路を開放した。気象地理物理庁は雨期のピークが2月中旬と予想しており、高速道路を走るオートバイの光景はまだ続きそうだ。(小塩航大)

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