オランウータンに会いに タンジュン・プティン 国立公園の保護施設 「キャンプ・リーキー」
泥炭を含む川は黒かった。すくってみると澄んでいて、とてもきれいな川だ。水面は両岸のマングローブ林や空を鏡のように反射している。スピードボートで30分近く進んだだろうか。インドネシア初のオランウータン・リハビリテーション施設として、40年以上前、カリマンタン島南部に作られた「キャンプ・リーキー」に到着した。
川の上に作られた橋を進むと途中で観光客の人だかりができている。覗き込むとキャンプ・リーキーで最高齢の雌のオランウータン「シスウィ」が気持ち良さそうに日向ぼっこし、道を塞いでいた。横を通りすぎると、一瞥しただけでそっぽを向かれた。オランウータンは通常、人に近づくことはないが、シスウィはキャンプ・リーキーで生まれ、人間と一緒に暮らしてきたために、人間に慣れているのだという。
中部カリマンタン州西コタワリンガン県とスルヤン県にまたがるタンジュン・プティン国立公園内にキャンプ・リーキーはある。1971年にドイツのビルーテ・ガルディカス博士によって研究用施設として開設され、これまでに200頭近くを森に返してきた。1995年にリハビリ施設としての役目は終わり、現在は研究と観光のための施設として解放されている。ガイドのエファンさんによると、インドネシアで最もオランウータンを見やすい施設だという。
エファンさんが国立公園で働き始めた13年前は、違法伐採などが多く、「とても雰囲気が悪かった」という。しかしここ2〜3年は観光地として注目が集まり、住民がオランウータンの住む森を保護する意識が高まったため、「地域全体がオランウータンと一緒に住むことを重要視するようになっている」と話す。
政府も施設の整備を進める。今年11月には新しい観光センターや清潔なトイレ、メディアセンターなどが新設され、観光客誘致に力を入れている。(中部カリマンタン州西コタワリンガンで高橋佳久、写真も)
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国立公園がある中部カリマンタン州西コタワリンガン県パンカランブンにはカルスター航空が一日一便、ジャカルタからの直行便を運航している。
国立公園には入場料(2万ルピア)やガイド料(15万ルピア〜25万ルピア)、カメラ持ち込み料などを支払って入場する。上記は外国人向け価格で、持ち込む機材などによっても値段は異なる。
オランウータンが観察できるキャンプ・リーキーなどへはスピードボート(60万ルピア)か、クロトック(50万ルピア〜200万ルピア)と呼ばれる台所やトイレが付き、複数人で寝泊まりが可能な船で移動する。クロトックの場合はゆっくりと川を渡り2、3日掛けて施設を回る。ピーク時には3、4カ月ほど前から予約が必要だという。
ガイドのエファンさんによると、6月末〜10月がピークシーズンで、20社以上ある現地ツアー会社にツアーを申し込むのが一般的。1、2月が最もすいており、お勧めだという。