ごみ山は眠らない バンタルグバン処理場

 人の嗅覚は優れている。既にこの場に慣れた。あらゆるものが入り混ざったにおいにやられた2分前を思い返す。頭上で太陽が強く照っている。無数のハエが群がる生ごみの地面を踏むと、含まれた水がずるずると音を立てる。腐敗物に囲まれ、人は働いていた。
 サニムさん(55)は集積場のごみから乾燥菓子を拾い、口に入れた。市場から直行のトラックで運ばれてきた食べ物はまだ食べることができる。ぼりぼり音を立てながら笑みをつくった。「時が経てば、人は慣れる」。
 24時間開放されている西ジャワ州ブカシ市のバンタルグバンごみ処理場には、首都圏から1日約6千トンのごみが運ばれる。昼は直射日光で額から汗を流し、夜は今にも崩れそうな足場に目を凝らす。
 サニムさんは1990年代、それまでの仕事をやめ、ごみ処理場で働き始めた。天気に左右される農作業と比べ、ごみを多く集めさえすれば1カ月150万〜250万ルピアを稼ぐことができる。子ども4人は皆、処理場で働く。
 午前2時、ごみ山は真っ暗だ。ごみをすくっては首を振るジョベルカーのライトが約2分に1度、こちらを照らす。やってくる光を頼りにごみを探す。「カネのために働く。もっと条件の良い仕事があれば、そりゃあそっちを選ぶさ」。長男のヌラサンさん(32)は声高く笑った。 (上松亮介、写真も)

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