海洋問題を革新へ導く UNDP 2月19日開催 ASEANブルー・イノベーションエキスポ&ビジネスマッチング

 日本政府の支援を受けて国連開発計画(UNDP)インドネシア事務所が実施するブルーエコノミー支援プロジェクトの一環となる展示会「ASEANブルー・イノベーションエキスポ&ビジネスマッチング」が19日、南ジャカルタのムナラ・マンディリで開催される。同プロジェクトは、2023年12月に東京で開催された日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議での共同ビジョンステートメントおよびASEANが採択した「ブルーエコノミーフレームワーク」を背景に始動したもので、これを受けて日本政府はASEAN諸国と東ティモール支援のためにUNDPを通して資金を拠出した。海洋プラスチック問題や小規模漁業の脆弱性、気候変動による海面上昇リスクなど、海洋にまつわる多様な課題が山積するASEAN地域で、革新的なソリューションを創出する機運が高まっている。


 インドネシアは世界第2位の漁獲量を誇る一方、年間60万~150万トンに及ぶ海洋プラスチック廃棄物が流出していると指摘される。雨季にはバリ島など沿岸部にごみが大量に押し寄せ、自治体や軍が総出で撤去作業を行っても追いつかないとの報告もされている。また、多くの漁業者が小規模事業者であることに加え、漁獲物の冷蔵流通インフラが整わないこともあり、十分な収益を得られないまま生計が不安定化するケースが後を絶たない。一部の離島部では貧困率が25%を超え、発育阻害率が30%を上回る地域もあるとされ、海洋・漁業に関わる問題は社会問題にも密接に結びついている。
 こうした現状を受け、UNDPはASEAN地域における「ブルーエコノミー」の加速を目指すプロジェクト「ASEANブルーイノベーションチャレンジ」を打ち立てた。「持続可能な水産業」、「海洋プラスチック問題の解決策」、「持続可能な観光」、「気候変動問題の解決策」の4つを柱に、ASEANと東ティモールの11カ国からイノベーターを公募し、集まった1341の中から60の企業・団体を選出した。UNDPによる事業創出サポート対象となった企業・団体のうちインドネシアからは8件が選出された。


◆知識共有のプラットフォーム

 当日は、60企業・団体が一堂に会し、企業や投資機関、政府機関、財団などとの交流機会が設けられる。本展示会は新たな技術やビジネスモデルを披露し合い、多様な市場や官民連携の可能性を探る知識を共有するプラットフォームとなることも見込まれている。
 UNDPインドネシア事務所の下村憲正常駐代表は「ブルーエコノミーはSDGsの経済・社会・環境の3つの柱に深く関わる」とし、同展示会においてASEAN域内のイノベーターと企業・組織が結び付き、新しい知見や技術を共有することが、「インドネシアを含む各国の海洋経済を持続可能な方向へ導くことになる」と強調する。日本企業の参加を促進する取り組みも行われる。当日はジャパンデスクが設置され、日本語での展示ツアーガイドや夕食会なども予定されている。同事務所ブルーエコノミーセクター・テクニカルスペシャリストの岡本聡子氏は「日系企業にも学びの好機があるし、ASEANのイノベーターにとっても日本市場や技術を知る絶好の機会となる」と期待を寄せる。イノベーターには、海洋プラスチックを再生して建築用タイルを製造するベンチャー企業や、養殖漁業のリアルタイム管理を実現するIoTソリューションや淡水魚と野菜を同時に育てることで、循環型農業システムを提案する企業などが介する。
 UNDPは、インドネシア国家開発計画庁との連携で「SDGアカデミー」を開講している。6カ月ほどかけてSDGsを学び、各分野の専門家とのワークショップを重ねるカリキュラムで、これまでに複数回の開講を経て卒業生のネットワークが広がっている。今後は、今回採択されたブルーエコノミーのイノベーターを講師として招き、海洋ごみ問題や漁業DXの事例を共有することを検討している。
 下村氏は「ブルーエコノミーを切り口にした人材育成が、今後のインドネシアやASEAN全体の未来を左右する」と語る。


◆ASEANから生まれるブルーイノベーションの可能性

 一方、ブルーエコノミー支援プロジェクトは今年度いっぱいを目途に大きな区切りを迎えるが、その後もUNDPのネットワークを通じたフォローアップが継続される見通しだ。本展示会で選出された団体・企業は各国の政府機関や海外の投資家、技術パートナーらと連携しながら事業を拡大していくことが期待されている。
 下村氏は「4月から開催される大阪・関西万博に合わせて、インドネシア政府やASEAN事務局、日本企業などと協力しながら、今回選出したASEAN諸国のイノベーターを日本に招いて、日本政府による支援を得て実現したプロジェクトの成果をアピールする構想もある」と話す。
これを受けて、岡本氏は「海洋プラスチック問題や小規模漁業支援など、一国のみでは完結しない課題を共有し、グローバルにアピールする絶好の場になる。日本企業もASEAN市場に進出する上で、社会課題の解決を軸にしたアプローチが期待されている」と述べた。
 本展示会を契機に始まる国際連携の流れが、やがては大阪・関西万博へと続き、さらにはASEAN全域や世界各国をも巻き込む大きな
うねりを生む可能性もあり、持続可能なブルーエコノミーの実現へ向け、今後の動向にますます注目が集まる。

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