懐かしさを求めて ガンビル駅 エコノミークラスの旅

 ジャカルタはお洒落なカフェや美味しいレストランがたくさんある街、物価が高い街。近年赴任された方々から聞く声に確かにと頷きます。都心部ではアナログで泥臭い混沌とした一昔前のジャカルタは消えつつあり、流行のファッションを身にまといスマートフォンを片手にオンラインショッピングや便利なアプリを使いこなす都市生活が実現しています。そんな時代の流れの中、ふと少し懐かしい感じを味わうとなんだか落ち着くことも。今回のおすすめ観光情報はガンビル駅の発展とジャカルタから乗るエコノミークラスの鉄道体験について。

 中央ジャカルタ、独立記念公園に面したガンビル駅は中距離・長距離列車の始発駅。1871年の開業当時は現在地の数百メートル南に位置していたのだそうです。現在の駅は、日本の国際協力事業によるJABOTABEK圏鉄道近代化プロジェクトの一環で1992年に高架駅として完成した駅舎です。言わずと知れた日本の技術、英知、プロフェッショナリズムの結晶、ジャカルタ都市高速鉄道MRT開通の25年以上も前に日本の鉄道技術がインドネシアの大量輸送機関に変革をもたらし、現在でも多くの人に利用されていることに日本とインドネシアの友好関係が誇らしくも感じます。そして現在に至ってもさらなるサービス向上と広報活動に力を入れている様子。そのひとつが空港同様の顔認証ゲートの導入です。
 インドネシアの中長距離列車は全席指定席。切符購入時には身分証明書番号の入力が必須で席番号も指定します。改札時に切符と身分証明書を同時に提示して本人確認を受けることが必要だったのですが、ガンビル駅にも特設会場が設けられて写真入りの身分証明書を提示して写真を撮るという作業の列に大勢の人が並んでいました。ただしこの手続きに有効な身分証明書はインドネシアのKTPのみのようで外国人の場合は従来通り改札で本人確認をすることで今回の乗車となりました。
 さて、改札を抜けたらいよいよホームでの乗車待ちです。ガンビル駅からの独立記念塔「モナス」の展望は地上の道路から見るそれとは違う距離感と切符を持つ者だけに許された制限エリアという特別感とでちょっとワクワク。出発する時は、「いってきます、ジャカルタ」、帰ってくると「ただいま、ジャカルタ」と声をかけると、見守っていてくれる気もするんです。
 さて、そんな思いで乗るのは懐かしさを求めてのエコノミークラス。最近はラグジュエリーな車両も増えている鉄道ですが、まだまだクラスやサービスに多様性も残り、TPOで使い分けができるのが利点のひとつ。リクライニングも方向の回転もできないシンプルな座席はそれでも全席に携帯電話の充電ができるUSBポート付き、全席指定ですから取り合いや立ち席になることはない利便性と安全性は保たれていています。想像するほどのこってこての不便さと懐かしさは感じないまま目的地に着き、いざ下車準備となった時、ようやく見つけました、たったひとつの「これは困るかもしれない」という愛すべき懐かしいもの、お手洗いの扉に張られた和式トイレマーク。現実的に困るのは困りますが(?)、探していた懐かしさに出会えた嬉しさに思わず笑みを浮かべたのでした。
 皆さまもぜひ、様々なニーズに応え、懐かしくも進化を続けるインドネシアの鉄道を体験してみてくださいね。(水柿その子 写真も)

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