ジャカルタ特別州知事選

 4月末に大統領選挙の決着が着くやいなや、政界は11月末に行われる全国統一首長選挙の準備で忙しい。全国38州中37の州で州知事を選び、全514県・市の自治体のうち508カ所で県知事・市長を選ぶ選挙だ。
 それは全国各地の実質的な権力者を選出するイベントとなる。各地で利権を巡る熾烈な権力闘争が繰り広げられ、地方エリートにとって大統領選よりはるかに重要な選挙である。
 投票日は11月27日で、立候補者の登録は8月末の予定だ。つまり、これから約2カ月の間、候補者選定の政治駆け引きがヒートアップしていく。どのような地方リーダーたちが、プラボウォ政権の船出と時を同じくして誕生するのか。インドネシアの今後5年を展望する上で重要なポイントとなろう。
 中でも一番興味深いのがジャカルタである。首都ではなくなるものの、依然として経済やビジネスの中心はジャカルタに残る。ジョコウィやアニスのように、ジャカルタ特別州知事が大統領候補へのステップになってきたことから、次期州知事にも大きな関心が集まる。
 そんな最中の5月29日、最高裁判所は30歳以上だった州知事立候補要件を緩和し、就任時に30歳であればよいという奇妙な判決を異例の速さで下した。これには政界も驚き、判決は明らかにジョコウィ大統領の次男の出馬を睨んだ司法工作だとメディアは批判を強めている。
 この展開は、先の大統領選挙を彷彿させる。ジョコウィの長男のギブラン次期副大統領の出馬資格を緩和させた憲法裁の判決である。今回は29歳の次男カエサンを、ジャカルタ州知事選挙に出馬させるための工作ではないかと憶測を呼んでいる。
 確かにその可能性もあろう。しかし、もし選挙のプロが描いている絵図だとしたら、結構お粗末だと言わざるを得ない。
 ジャカルタは特殊な地域だ。合理的な有権者が多い。地方で幅を利かす世襲政治に最も批判的な州である。2017年の州知事選でも、ユドヨノ前大統領の期待の息子は落選した。
 実際、世論調査でもカエサンの支持率は1%程度である。遥かに高い支持率を誇る候補はわんさかいる。その筆頭がアニス前ジャカルタ特別州知事だ。前西ジャワ州知事のカミルと、元ジャカルタ州知事のアホックもアニス同様、20%超えの世論支持率がある。こういう実績ベースで評価される人たちに対し、カエサンの売りは「若さ」以外に皆無だ。ジャカルタの有権者は、そういう「売り」には響かない。
 むしろ最高裁の判決は、アニスにとって有利に働く可能性さえある。縁故主義の匂いのするカエサンの出馬に批判的な市民の支持がアニスに集まるからだ。その意味では、アニスの再登板を妨げたい現政権にとって、最高裁判決は逆効果でしかない。
 アニスはイスラム・コミュニティーに強い支持地盤がある。一方、カミルとアホックは世俗的な層に支持が強く、もし二人が出馬すれば、同じ支持層を取り合うことになり、アニスに優位となろう。
 そういうシビアな競争のなか、どの候補であれカエサンを副州知事候補にすれば足かせにしかならない。「ジャカルタ舐めるなよ」という話である。(本名純・立命館大学国際関係学部教授)

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