牧歌的な田園風景にアウトレット 消費地直結、多彩な客層 西ジャワ州カラワン県

 昨年12月にソフトオープンしたアウトレットモール「ザ・グランド・アウトレット・イースト・ジャカルタ」(西ジャワ州カラワン県)は首都中心から約60㌔の距離。バイクの慣らし運転を兼ね、ふらっと〝偵察〟に行ってみた。経済大国への道をひた走るインドネシア。この国の消費者が日本式アウトレットをどう受け入れるのか、興味があった。 
 
 国際ブランドを集める国内初の大規模ラグジュアリーアウトレットモール。入居を予定する店舗は最終的には180店となり、敷地面積は8万8000平方㍍で1200台分の駐車場を完備する。
 日本最大の「御殿場プレミアム・アウトレット」(静岡県御殿場市)は2007年の開業で敷地面積は42万2000平方㍍。ここに290店舗が軒を連ねるから、単純比較ではカワラン版アウトレットはこじんまりしているかもしれない。
 しかし、立地を見ると高速道路を利用する車移動ならジャカルタ中心部から約60分。しかも家族を帯同する邦人の駐在員が増え続けるチカラン、そしてデルタマスを後背地に抱える。近隣では中間層向けの住宅開発も急ピッチで進んでおり、将来の発展が期待される消費地に直結するアウトレットと言えそうだ。
 バイク移動とした今回、チカランの工場集積地を抜け、ゴルフ場や牧歌的な田園風景を抜けて行くと、水田地帯の中に忽然と近代的なアウトレットが姿を現す。周囲では農民が畑仕事に勤しみ、サンダル履きの地元民が沼地で釣り糸を垂れる姿もある。
 このコントラストがなんともミスマッチという第一印象を受けたが、アウトレットに足を踏み込めば、消費意欲が旺盛な中間層がいた。ショッピングバッグを抱えた家族連れがメイドをともなって買い物を楽しみ、フードコートでは頼んだ料理を所狭しとテーブルに並べ、豊かさをおう歌していた。
 その一角にヒジャブ姿のムスリムたちの集団がいた。持ち物は質素で注文したのは飲み物だけ。周囲とは雰囲気が明らかに違い、話しかけてみた。
 「今日の予算は200万ルピア。子ども服と靴を見に来たの」とヌールさん(32)は事もなげに言う。200万ルピアといえば西ジャワ州の月の最低賃金レベル。生業を聞けば近隣から来た有機栽培農家だそう。「首都圏に出荷するようになり、コロナ収束後、一気に収入が増えた」という。
 所得格差はインドネシア社会が抱える大きな課題だが、地域によってその実情は刻々と変化しているよう。アウトレットの客層も多彩だった。
 ジャカルタに向かう帰路、22日に開業する「イオンモールデルタマス」が見えた。右肩上がりの経済成長を続けるインドネシア。例えば10年後、この田園風景も巨大消費地に様変わりするのだろうか。(長谷川周人、写真も)

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