介護現場を支えるインドネシア人労働者  当局間に認識ギャップも 台湾

 少子高齢化が進む中、介護業界の人手不足が深刻化する日本。その救世主となり得るのがインドネシアの介護人材と言われるが、お隣の台湾では介護現場の77%をインドネシア人労働者が支えている。「リトル・インドネシア」と化す週末の台北駅で、彼らの暮らしぶりを聞いた。   

 「インドネシア料理を禁じられた。クルドゥンも認められない。日本は受け入れ枠が少なく、高収入が得られる韓国は魅力だが暴力が絶えない。耐えるしかない」。
 こう訴えるのは、ランプン州出身で住み込みメイドとして台北近郊の新北市で働くスティさん(41)。2019年に来台した当初は雇用主に宗教をも否定され、イスラム教徒でありながら礼拝も許されなかった。
 しかし、コロナ禍で外国人労働者の帰国が相次ぐ中、雇用環境を見直す動きが台湾各地に広がった。「今は礼拝もクルドゥンも認められる。以前は恥ずかしくて外出も嫌だったけれど、今はクルドゥンをして外を出歩ける」。今年のイドゥル・アドハ(犠牲祭)は休暇を取り、同州出身の仲間3人と礼拝にも行けた。
 介護士として台北で働く東ジャワ州出身のヌールさん(29)の場合、公休は年1回。たった1日しか認められない。「周囲では月1日が平均的。週休2日? ありえない。2年間休みゼロだった友だちもいる。高齢者相手の介護はエンドレス。仕方ないと思う」。
 台湾労働部(厚労省に相当)の統計によると、外国人労働者の受け入れは1990年代に始まり、今年4月現在で約73万人に膨れ上がった。業種別でみると製造業が約65%。介護が約30%だ。
 このうちインドネシア人が占める割合は全体の4割に迫り、さらに介護業界に限れば77%となる。台湾の介護現場はまさにインドネシア人が頼みの綱だ。
 にもかかわらず、前述のスティさんやヌールさんのように労働環境をめぐるトラブルは絶えないが、それでも需給関係が成り立つのは「介護士としての月収は1000万ルピアちょっと。東ジャワ州でこれだけの稼ぎは得られない」とアニサさん(26)は苦笑した。
 不満を押し殺して働く彼女たちに対し、台湾当局の友人は担当外である事を前提にこう話す。「出国前に結ぶ送り出し機関との契約をしっかり確認してほしい」。台湾側は介護要員の輪番制も休暇制度も認めているが、コロナ禍で外国人労働者が激減。ハンドリングを行う送り出し機関側がそのルールを守らないケースが急増したという。
 外国人労働者の受け入れで先行する台湾。だが、インドネシア政府が台湾当局に公費負担の一方的な増額を通告するなど当局間の認識にもずれがあり、健全な労働環境を整えるにはなお時間がかかりそうだ。(台北=長谷川周人、写真も)

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