際立ち始めた外国企業の影 新首都建設の現場 東カリマンタン州・ヌサンタラ

 「バスに乗り遅れるな」――。そんな不安を煽って政府は日本に投資を促し、首都移転プロジェクトへのさらなる参入を求める。しかし、新首都「ヌサンタラ(群島=IKN)」の実相はしかと見えず、日本側は慎重な姿勢を崩していない。独立記念日の式典がIKNに移るまであと1年。刻々を変化する現地の様子をリポートする。  

 国際協力機構(JICA)が主催した視察ツアーに同行。25日、半日をかけて水利インフラ2カ所、大統領府など政府の中枢機能が集中する政府コアエリア、そして作業員宿舎を取材した。
 ジャカルタから新首都へは空路で1200㌔。2時間弱のフライトでまず、東カリマンタン州の中心都市で石油製品などの輸出港として知られるバリクパパンに入る。ここから四輪駆動車に乗り継ぎ、高速道路を経て丘陵地帯を切り開くIKNまで約2時間だ。
 「一番乗りしたのは中国企業。そこに欧米勢が加わり、昨年から韓国企業がどっとなだれ込んできた。もちろんJICA関係者にもお泊まりいただいている」
 バリクパパンにある五つ星ホテルのフロントマネージャーは、日本の存在を感じつつ、プロジェクトの国際化を肌で感じていた。朝食会場で出会ったドイツ人技師(41)によれば、「インドネシア側の要請で整地プロジェクトに加わり、自分は8月にドイツから到着する本隊ための下準備をしている。今回は2カ月の滞在だが、パーティーは始まったばかり。IKN建設は〝多国籍軍〟でこれから本格化するだろう」と話した。
 実際の建設現場を歩いて見ると、整地作業を行う建設機械は日本製のほか、オランダなど欧州企業が目立った。
 大統領府やイスタナ(大統領宮殿)など施設建設が始まっている政府コアエリアは、中国の三一重工が投入したコンクリートポンプ車がうなりを上げていた。東日本大震災で爆発事故などを起こした福島第一原発。難関の冷却水の注水作業を高所から実現して日本を救ったあの通称「大キリン」だった。
 一方、水処理施設の構築が始まるダムと取水場では、韓国企業の技術陣がこれからの主役となる。公共事業省の担当者によれば、IKNは国内で初めて水道水の飲用を実現するが、その浄化技術は韓国が担当する。韓国側はセパク・セモイダムでは無償提供を申し出ているという。
 「大統領選もある。IKNがどうなるか、見守るしかない」と前置きしながらも、「韓国は近視眼的な見返りは求めず、戦略的な判断に基づいて投資を加速させるだろう」。バリクパパン郊外の空港で居合わせた韓国人ビジネスマンは言う。
 新首都を見渡せば、プロジェクトは急ピッチで進んでいる。ただ、開発はまだピンポイントであり「点」。今後は「線」から「面」へと展開する必要があるが、この国との関わりを日本は中長期的にどう位置付けるのか。判断を迫られていると言えそうだ。(長谷川周人、写真も)

スナン・スナン の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly