孤独な日本人 ㊦ (76)
前回の「孤独な日本人㊤」をおさらいすると、駐在員の夫が半年遅れで妻子をジャカルタに迎え、十分にサポートできるか心配という相談に対し、駐在地での生活を漫喫するには仲良しを持てるかがポイントで、そのためには人間関係作りが肝要となり、対処法として「ありがとう」「ごめんなさい」「助けて欲しい」の3つの言葉を使いましょう、とアドバイスしました。
さて、読者の皆さんの中には、変哲のない対処法なので落胆された方もいらっしゃるかもしれませんが、果たして、上記の3つの言葉を日頃から積極的に使えている人は、どの位いらっしゃいますでしょうか? 私はそう多くはないと思います。この言葉をたくさん使えていたら多くの人間関係問題は回避できるはずですが、カウンセリングの現場には親子や夫婦の問題、職場の人間関係問題に悩む人が溢れているからです。
今の日本は世代に関わらず孤独感を抱えた人が大勢おり、直接会話が失われつつある中、密なコミュニケーションを交わす基本的技術も失われつつあるように感じられます。
「引きこもり」や「不登校」の問題を抱えている家庭では、決まってこの3つの言葉が過少な状態にありますが、使えるようになるほどに言う側も言われる側もエネルギーが上がり始めます。
「ありがとう」なら「いつも口にしています」と自信がある方にも、注意すべきことがあります。感謝は目の前の人に伝えることが最も大切であるのに、他人に感謝した話を目の前の人に伝えるだけで、目の前の人に感謝することを忘れてしまっている光景を見ることがしばしばあります。
「ごめんなさい」と言えない大人も多いです。配偶者や親、子どもにも人として真摯に謝ることができていますか?
「助けて欲しい」は3つの言葉の中で、最も口にしづらい言葉です。「人に迷惑をかけてはいけない」という気持ちが優先します。自分を完璧に見せることに躍起になる人も大勢いますが、「助けて欲しい」と口にできれば、他者がしてくれたことに感謝を伝えることができ、その人に自己重要感を与えられて喜んでもらえ、結果として人間関係を良くすることができる言葉なのです。
この3つの言葉をタイムリーに使い、良い人間関係を築いていきましょう。(家族関係心理士/心理カウンセラー 高﨑美佳)
〈連絡先〉カウンセリングルーム「ミカモーレ」(fc.mikamour@gmail.com)まで。