ボロブドゥール復旧を願う ジョクジャカルタ 伝統と歴史が息づく街

 千年の眠りから目覚め、人種や宗教の垣根を越えて訪問者の心をつかむボロブドゥール寺院。ジョクジャと聞けばボロブドゥール寺院と答える人が多いが、中部ジャワ州マグラン県にあり、ジョクジャカルタ特別州に位置していない。しかし、ジョクジャカルタ特別州の観光地も負けてはない。朝と夜で表情を変えるマリオボロ通り、水の離宮タマン・サリなど何度も通いたくなる魅力で溢れている。

 780~840年にかけて建立された世界最大級の仏教寺院、ボロブドゥール寺院。その後、1814年にイギリス人のラッフルズに発見されるまで、森林に覆われ千年もの間、忘れ去られる存在となる。ムラピ山の噴火が原因か、はたまたイスラム勢力から寺院を守るためか、謎は明らかになっていない。
 謎の多いボロブドゥール寺院であるが故、宗教の垣根を越え人々の心を打つのだろうか。
 同寺院でガイドを務めるダヤットさん(40)によれば、仏像全504体の内、280体の頭がオランダ植民地時代に起きた窃盗や地震の影響などで失われたという。また、「20頭はオランダのアムステルダムにあるが、残りはどの国に何頭あるのか把握できていない」と説明した。
 一方、同寺院が抱える最大の悩みは「止まらぬ損傷」。コロナ禍前の2019年には国内外から観光客約400万人が訪れた。寺院に腰掛けたり落書きをしたりする観光客が後を絶たない。訪問者のマナーの悪さ以外にも自然劣化や2006年に起きた中部ジャワ地震による影響も残る。
 損傷具合や返ってこない仏像の頭に悲鳴をあげそうになりながら拝観した。世界遺産に登録されたのなら、世界中の国や人も保全に協力すべきだ。時を超えなお存在し続ける歴史的文化遺産の色あせ具合に惹かれる時もある。だが、ボロブドゥール寺院に限っては元あった姿のまま後世まで残して欲しいと感じた。
 場所はジョクジャに戻る。ジョクジャの繁華街、マリオボロ通りは昼と夜で2つの顔を持つ。人がまばらな日中は穏やかな空気が流れ、夜は若者で溢れて活気づき、賑やかになる。午後6~9時は歩行者天国となり、通りを歩いているだけで楽しいが、外国人観光客数が戻らないことが原因か、閑古鳥が鳴く服飾品店やお土産ショップなどが目に付いた。
 クラトン(王宮)からほど近いかつての王と王妃23人、子ども70人の水浴び場であったタマン・サリ。王が上階からバラの花を王妃に投げその日の夜の相手を決めたという。
 また、世界遺産プランバナン寺院の南3㌔にあり、クラトンとも関係があるラトゥ・ボコ寺院。この日は日没に間に合わなかったが、日の入り時に幻想的な風景が見られる。
 一方、食では、外国人観光客にあまり知られていないジャワ料理レストラン「Bakmi Jowo Mbah Gito」へ。ここでは優しい味付けの鶏そばなどが食べられる。食事を終えて店を後にしようとした頃、店頭は席が空くのを待つ客で溢れていた。
 まだまだジョクジャを回りきれていない。プランバナン寺院やバティック工場、ワヤン・クリット(影絵芝居)など楽しみが残る。伝統や歴史が息づくジョクジャに魅了されてしまい再訪したいと感じた。(青山桃花、写真も)

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