欲求を聞く (40)

 「部下に、自分で考えて行動するようにと繰り返し指示していますが、いつまでたっても指示待ちで、頭を抱えています」
 結論を言うと、部下が主体性ある行動を取ることを願うのであれば、自分の「欲求」を伝えるのではなく、相手の「欲求」に寄り添うことです。このことは、人間という生き物を理解すれば、分かります。人間は理屈で動くものではなく、感情が行動を左右するからです。どんなに自分の「こうして欲しい」という欲求を話したところで、それによって部下が自発的に行動を起こすことはありません。自ら行動して欲しいなら、自分の欲求ではなく、相手の心の中にある欲求を膨らませることです。あなた自身が、部下の話を真摯に聞けるか、関わりを持ちたいという気持ちを相手に伝えられるかが勝負です。
 このことはシンプルのようで実は実践が難しく、結果、多くの人に人間関係で問題を起こさせ、他者との信頼関係作りを難しくします。なぜ、相手の欲求に耳を傾けることが難しいかというと、人間は自分軸で物事を考える生き物なので、本能的に自分の欲求を話してしまいがちだからです。その結果、相手の欲求を聞くことができず、気持ちが通じ合うことが難しくなってしまいます。
 例えば、あなたがデスクでパソコンに向かって作業中、部下が何か提案を持って訪ねて来たとします。その際、いつも部下を快く迎え入れ、手を止めて部下に身体を向け、目を見て話を聞けますか。受けた質問に対し、「どれどれ、どこが分からないの?」と部下に真摯に関わることができていますか。「こんなことも分からないのか」と心の中で呟いていませんか。
 こういう上司に限って、部下が自発的に考え、試行錯誤した提案を持って来たにもかかわらず、「この前、君に指示した仕事はどうなっている。優先事項を考えて行動しろ」などと足蹴りを喰らわしています。お分かりですよね、相手の欲求を聞いているのではなく、自分の欲求を話しています。これでは部下はあなたを嫌な上司と思うでしょう。二度と相談に来なくなります。
 部下を動かしたいなら、相手を変えようとするのではなく、相手の心の中に強い欲求を起こさせる言葉を掛けましょう。そうすれば、部下の心に火が灯ります。自ら動いていく人に変わるでしょう。(コミュニケーション専門カウンセラー 高﨑美佳)
 本稿へのご質問などは、カウンセリングルーム「ミカモーレ」(fc.mikamour@gmail.com)
まで。

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