規制の網はまだら模様 首都 〝ロックダウン〟

 中央ジャカルタの幹線道路はバリケードで封鎖され、人影も車の通行もまばら。政府が避け続けてきた〝ロックダウン〟がついに首都、ジャカルタで始まった――。緊急活動制限が発出された3日、そんな印象を受けた。ただ、実際に街中を歩いてみると、規制の網はまだら模様。庶民が暮らすエリアでは緩さが残る。

 強い感染力を持つデルタ株(インド型変異株)が猛威を振るう中、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は6月下旬、従来の行動制限を維持する方針を確認した。感染拡大に歯止めがかからず、医療機関の病床使用率は90%に迫る。地方政府や専門家からはロックダウンを求める声が上がったが、大統領は首を縦には振らなかった。
 しかし、15日現在、新規感染者が1日あたり5万人を超え、連日のように「過去最多を更新」の文字が並ぶ。在留邦人の間でも感染が広がり、政府は7月1日、緊急活動制限の発動に踏み切った。「在宅勤務率100%」。ロックダウンという表現こそ避けたが、この数字はやはり衝撃的だった。
 そこで発出から1週間となる10日、南北を縦貫するスディルマン通りをオートバイで走ってみた。「ジャカルタの今」を画像で記録するためでもあった。
 改装工事中のサリナ・デパート前の交差点では、4人の警官が交通規制にあたっていた。タムリン通りに進入するには規制除外資格が必要という。報道機関は規制対象にならず、プレスカードを見せればすんなり通してくれる。
 ただ、資格の確認は必ずしも厳密ではないようだ。近くの商店に勤める店員(26)は「規制が厳しかったのは最初の3日間だけ。バイクタクシーのジャケットを着ていれば、今はもうどこでも走れる」という。
 警官のひとりは、「本来は強行犯担当で、交通規制は経験がない。けれど、警視庁は総動員体制で交通規制に取り組んでいるから……」と自信なさげ。交通整理の手信号も板についておらず、オートバイが数珠つなぎになると書類確認もせず、すべて通した。
 とはいえ、交通量は圧倒的に少なく、ラマダン(断食月)前の規制緩和で渋滞が復活していたホテル・インドネシア前のロータリーも閑散としている。日系企業の事務所などが多く入居するミッドプラザやスミットマスの周辺にいたっては、まるで戒厳令下の様相を呈していた。少なくとも、表面的には……。
 一方、同じ中央ジャカルタでもタナアバンなどの大衆が暮らす地域では、普段通りの風景が広がっていた。繊維市場の周辺では警備隊が、密集を回避しようと人の流れを誘導しているが、焼け石に水といった印象が拭えない。
 そもそも道路封鎖にしても、こんな中途半端な人流規制にどれだけの意味があるのか。大衆迎合主義も大切だろうが、このままでは大統領は歴史に汚点を残す。街中を歩きながら、ため息ばかりが出た。 (長谷川周人、写真も)

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