チカラン もうひとつの〝素顔〟 「ウィサタ・アドベンチャー・カウン・ティル」

 日系企業の工場集積地として発展を続けるチカラン(西ジャワ州ブカシ県)にも、田園風景が広がり、人々の生活臭が漂うもうひとつの〝素顔〟がある。その一角で家族と暮らすインドネシア人として、内側から見るチカランを紹介できないか。東郊にあるウィサタ・アドベンチャー・カウン・ティル。今回は竹林を抜けたその先にあるこの公園で、自然の風を感じて日々の疲れを癒すチカラン住民の暮らしぶりに触れてみた。

 雑然とした旧市街区から工場地帯を抜けると、車窓から見える風景は牧歌的な田園風景に変わる。遮断機もない踏切では、線路上を羊の一家がのんびりと横切る。地平線まで続く田んぼはチカランの人たちにとって心の原風景でもある。
 チカランは瓦の産地としても知られる。粘る粘土質の土が瓦に適していると言われ、水田地帯に見える倉庫のような建物は粘土瓦を焼く窯だ。
 公園の看板に導かれて進むと、竹林を抜ける田舎道からはチベート川が見えてくる。地元住民によると前日の雨で流れが早くなっているそうだ。目に染みるような濃緑色の竹林の向こうにはチベート川の濁流。都市生活では無縁の自然の姿をすぐ近くに感じられる。
 公園にたどり着き、支払った入場料は1人1万ルピア。敷地内にはインスタ映えしそうな木製オブジェや手作り感あふれるツリーハウスがある。子どもたちは走り回り、親たちはおしゃべりを楽しむ。夜になればライトアップもされ、デートに訪れる若者たちの人気スポットだ。
 チカランで操業する日系自動車メーカーで警備員を勤めるンダンさん(48)は、妻のアデさん(50)と息子のムハマド君(6)を連れ立ち、家族水入らずの休日をこの公園で過ごしていた。
 「一人っ子だけど、ここなら他の子どもと一緒に遊べる」。ささやかな楽しみではあるが、アデさんの表情は穏やかだった。ンダンさんはレバラン(断食月明け大祭)休暇中も勤務が続いたが、「少し遅れた休暇を家族そろって外出できた」と顔をほころばせた。
 日系企業の組み立てラインで働くリンダさん(22)は、公園内のベンチで元同級生(23)とおしゃべりを楽しんでいた。休日の過ごし方を聞けば、年頃の女の子らしくこの公園でデートもするが、「普段は家か散歩」。モールでのショッピングなどはあまりしないそうだ。
 竹林を抜ける風を感じながら、木陰で自然との一体感を満喫する一時。世界ブランドが並ぶようなモールは確かにないが、チカランの人々は大都会では味わえない贅沢な時間を慎ましく過ごしている。(文・センディ・ラマ、写真・長谷川周人)

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