悩ましい一時帰国 日程調整は慎重に

 新型コロナウイルスの感染拡大にともなう行動制限下の出入国手続き。度重なる規定変更もあり、神経質な対応を求められる。けれど、不要不急の一時帰国ならいざ知らず、インドネシアで働く在留邦人にとり、業務などで避けられないケースもある。常備薬が底をつき、やむなく今月15日に帰国したが、緊張感がつきまとい、悩ましい。感染収束が進んで往来の自由度が広がるよう、願うばかりだ。

 昨年末に新型コロナ対策としてジャワ島とバリ島で始まった行動制限。外国人の入国制限措置も3月8日まで延長されており、一時帰国をするには、事前から入念な情報収集と時間的な余裕が必要と痛感した。
 残務との見合いの中、最初に手を付けたのは帰国便の確定だった。航空券代をおさえつつ、羽田便にしたい。自主隔離先となる実家は東京西郊にあり、成田便だと帰宅するレンタカー代などがかさむからだった。
 ところが、自分の確認不足なのだが、ひとつ誤算があった。搭乗前の72時間以内にPCR検査を受けて陰性証明書を用意する必要があるが、15日のフライトなら12日に受ければ問題なしと高をくくっていた。だが、今年は12日の金曜日がイムレック(春節)で祝日。しかも土日が入るから、万事休すではないか……。
 慌てて勤務先近くの公立病院に駆け込んだところ、土曜日は検査対応をしており、日曜日は閉院だが、検査結果の通知部門は機能しているという。陰性証明書のワッツアップ通知は6時間ほど遅れたが、なんとか無事出国できた。
 ただ、やはり以前とは勝手が違った。搭乗手続きの時、航空会社から羽田の検疫に提出する質問票を事前ウェブ入力するよう強く求められた。データをQRコードで示せれば、手続きがスムーズに進むというのだが、やるならWiーFi環境がある搭乗前しかない。早めに空港到着したつもりが、意外に忙しくなった。
 ただ、6番ゲート近くのコンビニ風の売店で飲み物を入手すれば、さしてやることもない。普段は立ち寄ることもない、土産物店をのぞいてみた。
 すると、驚いたことに「丁字たばこ(クレテック)」の扱いがなく、代わって中国製たばこが山積みなのだ。店員によれば「中国人の商用客が大量購入していく」。売れ筋を並べるのはわかるが、思わず「ここはインドネシアだ!」と心の中で叫んでしまった。
 だが、これで終わらない。空港備え付けのベビーカーにパンダマークが入っているのに気づいた。「パンダ外交」は対中警戒を解く伝統的な懐柔戦術であり、中国外交の〝お家芸〟だ。
 暗澹(あんたん)たる気分のまま、搭乗機に向かうと、今度は予想を上回るレベルで乗客がいない。「1人でもご搭乗頂ければ……」という客室乗務員のかぼそい声がなんとも切ない。
 羽田到着後の手続きは時間はかかるが、陰性である限り、PCR検査も含めて指示に従えばスムーズに処理される。さすが日本クオリティと思いつつ、街に出れば人々の表情は意気消沈。緊急事態宣言の効果あってか、感染者数は減少傾向にあるが、公共交通機関は普通に混み合っており、日本の行く末にもまた一抹の不安を感じてしまう。(長谷川周人、写真も)

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