二極化が進む社会の〝足〟 商機ととらえる中国勢 

 撮りためた二輪車の写真を整理しながら、考え込んでしまった。空前のブームとなった自転車にしても、インドネシア社会の〝足〟というべきオートバイにしても、二極化が進んでいるように見える。豊かな人々が増え、選択肢も増える。これは歓迎したい。ただ、これを商機ととらえる中国が、市場への参入を虎視眈々と狙っている現実もあるよう。これにインドネシアが翻弄されるようなことがあれば、将来に禍根を残すのではないかと心配になる。

 「巨大市場だからこそ、ニーズは多種多様。オートバイ市場は多層的で、それぞれの層が抱える購買人口は大きい。商用を除き、趣味の世界に閉じ込められてしまった日本市場とは違う」
 こんな説明をしてくれた日系オートバイメーカーの駐在員がいた。コロナ禍の影響を横に置けば、右肩上がりの成長を続けてきたインドネシア。1人当たり国内総生産(GDP)は4千ドルを超え、需要は二輪から四輪に移行する発展プロセスにある。2億7千万人という総人口も増え続けており、将来に期待が膨らむとの話はわかりやすかった。
 これに西ジャワ州に住むハーレー愛好家、ガブランさん(47)はこう補足する。
 「節約を重ねて5年前に20ジュタのオートバイを手に入れた人が、余裕ができて2台目を買い増す。これがこの10年の傾向とすれば、近年は70ジュタのオートバイを買える層も増えてきた。しかも高額オートバイに照準を合わせる層は低年齢化している。二輪車も高速道路を走れるようになれば、大型車市場はドラスティックに変わるだろう」
 インドネシアのオートバイ保有台数は中国、インドに次ぐ世界第3位。主力は100~125ccクラスだが、ジャカルタ郊外の峠道では、所有感を満たす大型輸入車でツーリングを楽しむ富裕層が増えている。
 自転車の世界でも同じようなことが言えそうだ。健康ブームを背景に緩やかに成長してきたが、コロナ禍という特殊事情が加わり、空前の自転車ブームに火がついた。街中では在庫切れが続出しているが、人気はやはり高額の輸入車。後発の国産自転車はかなり余裕がある。
 「歪な成長こそ、絶好のチャンスだ」。こう切り出したのは、中国河北省から来た中国人ビジネスマンだ。ジャカルタ特別州を中心にレンタサイクル事業の拡大に走る日々という。
 「次は急成長が見込まれる電動自転車。中国はすでに生産台数が3億台を突破しており、この実績を踏み台にASEAN市場の攻略を官民一体で加速する。インドネシアでは小型オートバイ市場に食い込んでいく」と鼻息が荒い。(長谷川周人、写真も)

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