コロナ禍の選挙

 いよいよ12月9日に予定されている全国一斉地方首長選挙まで、あと1カ月となった。今年は、270の地域で実施される。当初9月にやる予定だったが、12月に延期となった。理由はもちろんコロナ。選挙クラスターによる感染拡大が懸念されたからである。
 では今、その懸念は過ぎ去ったのか。感染カーブは、フラットになるどころか、依然として右肩上がりが続いている。首長選の立候補者のなかにも感染者が60人出た。そのうち3人が亡くなっている。
 そもそもコロナ対策と選挙は水と油である。前者は移動制限とステイホームを求め、後者はキャンペーンや投票で人の集合を駆り立てる。このジレンマに各国が悩まされてきた。
 ニュージーランドやボリビア、香港では延期を決めた。逆にドイツやシンガポール、韓国そしてアメリカでは実施した。感染のトレーシング体制がしっかり確立しているという自信があっての実施である。
 ではインドネシアではどうか。まだトレーシング体制はひ弱だ。世論調査も、再延期が望ましいとする意見が多数である。国内の2大イスラム社会団体も、再延期すべきと訴えた。
にもかかわらず、政府は断行の意思を曲げない。なぜか。今やることにメリットを見出す人がいるからである。
 まず、コロナ禍で選挙活動が大きく制限されている今の状況は、コロナ支援を自らの功績として再選を訴える現職には都合がよい。逆に対抗馬には大きく不利に働く。
 また、コロナ禍の生活難で、2万ルピアや5万ルピアの価値も高まっている。であれば、有権者への金銭バラマキ作戦も、いつも以上に効果を発揮するであろう。
 さらには、感染を恐れて投票所に行かない人も増えよう。投票率の低下がおおいに予想される。それは浮動票の縮小となり、組織票の重みを増す。
 こういう状況にメリットを見いだせるのは、金と政治力がある候補者となる。それはどういう人たちか。
 例えば、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の息子や娘婿、マアルフ副大統領の娘、プラボウォ国防大臣の姪、プラモノ内閣官房長官の息子などが代表格であろう。彼らが各地で今回の知事選に出馬する。
 こういう中央政界のエリート家系に加え、地方政界の政治豪族も、次々と今回の出馬を決めている。数で示すと146の候補者が、そういう豪族の出身である。5年前の全国一斉地方首長選挙では、豪族メンバーの候補者は52人しかいなかった。その数が急速に膨れ上がっていることが見て取れる。
 これが何を意味するか。明らかに言えることは、まず地方の政治を牛耳る豪族が各地で増えていること。そして、そういう人たちにとって、コロナ危機は権力拡大のチャンスになっていることであろう。選挙の延期が論外な理由は、ここにあるのかもしれない。(本名純・立命館大学国際関係学部教授)

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