「もっとワヤンを、日本に」  日本語の同時字幕に挑戦 ソロ留学の岸美咲さん ㊤

 インドネシアの影絵芝居「ワヤン・クリット」に魅せられ、ジャワにやってきた一人の若者がいる。中部ジャワ州ソロに留学中の岸美咲さんだ。8月に公開されたワヤン・クリットのオンライン公演「Greget Dhalang」(主催・教育文化省)では、日本語の字幕をリアルタイムで作成。ワヤン史に新たな1ページを加えた。

 岸さんは東京藝術大学の音楽研究科に所属する現役の大学院生。現在は中部ジャワ州ソロのインドネシア芸術大学(ISI)スラカルタ校に留学し、ワヤン・クリットの人形使い「ダラン」や伝統音楽ガムランの実技などを学んでいる。
 ワヤン・クリットで用いられるジャワ語は「バハサ・ワヤン」とも呼ばれる。随所に古語や王族の用いた言葉遣いが織り交ぜられ、ジャワ語のネイティブでも、その意味を完全に理解するのは難しい。
 岸さん自身、「タイピングが追いつくか心配で、初回の公演は周囲にも特に宣伝しなかった」というが、イベントの情報はSNSを中心に広まり、「朝起きたら700回も再生されていました」とうれしい悲鳴を上げる。
 実際にダランの肉声を聞きながら、ワヤン・クリットの物語に触れる日本語字幕での公演は、吹き替えにはない臨場感がある。岸さんが字幕を手掛けた計3回の公演は多くの邦人に視聴され、「ジャカルタやバリに住んでいる知らない人たちから『面白かった』って反響が来るようになって、すごくびっくりした」と笑顔を見せる。
 そこで、「なんとなく(ワヤン・クリットに)興味はあるけど、(言葉が)分からないって人はたくさんいるんだろうなと思った」と、今回の公演を振り返る。
 芸術の都スラカルタでの留学生活はまだ続く。「もっと勉強して、もっとワヤンを、日本に伝えたい」。本場のワヤン・クリットを日本に広めようと、岸さんの挑戦は続く。
 次回は、ソロにある岸さんの自宅兼練習場を訪問。岸さんはワヤン・クリットの何に惹かれたのか、留学の先に夢見るものは何か。その思いを聞く。
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 悠久の歴史の中で育まれたジャワ島の文化・芸能の数々。新型コロナウイルスの感染が拡大する中でもインドネシアに残り、その魅力を発信し続ける3人の「アート系日本女子」の物語を紹介する。

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