癒やしの空間を求め117キロ ブカシ市チサアット村 目に染み入る濃緑の農村

 濃緑の田園風景、そして屈託のない農民の笑顔に触れたい。閉塞感が漂う自粛生活に疲れ、そんな癒やしの一時を求めて自転車をこぎ出した。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、心がけたのは「非・3密(密閉・密集・密接)」のエリア。往復117キロの道のりは意外性の連続にもなり、心も体もリセットされたような気がする。

 「非・3密」というのは簡単だが、息抜きの空間であることも大切で、そんな条件がそろった目的地は簡単には見つからない。公園などの公共施設は「大規模社会的制限(PSBB)」で全面的にクローズ。計画は行き先探しからつまった。
 悩んだ末、旧知のインドネシア人がくれたアドバイスは、西ジャワ州ブカシ市にあるチサアット橋。ジャカルタ特別州から見ると、チカランの手前に位置する農村にある吊り橋だ。曰く、「インドネシア人も在宅勤務に飽き飽きしている。そこで郊外まで足を伸ばしてみたい人たちの間で話題になり、注目のスポットらしい」という。
 決行日は5月8日。中央ジャカルタの自宅を出発し、まずチカンペック高速道に出た。道路のコンディションもよく、交通量も少ないから気持ちよく走れる。
 政府はラマダン(断食月)帰省を禁じており、途中、警察などによる交通検問にも出くわすが、特におとがめもなく、すんなりと通過できた。また、マラン川沿いの自転車専用道では、ブカシからジャカルタを目指して走る青年と話し込んだ。収入激減で野菜売りに転向したというベチャ(三輪自転車タクシー)に乗る青年は苦しい生活ぶりを話してくれた。こうした庶民が語る生の声に耳を傾けるのは、この社会を見る上で貴重な機会となった。
 さて、いよいよブカシ市の中心部に向けて進路を変えると、予想外の光景に出くわした。閑散としているはずの幹線道路が、トラックで大渋滞しているのだ。地元の商店主に理由を聞くと、警察の監視が厳しい高速を逃れ、一般道に交通が集中しているという。「脇道の生活道路に入る車があれば、そこで流れは止まる。幹線道路の規制でこっちは身動きがとれない。5月に入った直後からずっとこんな調子だよ」と嘆く。
 渋滞は走りにくいだけでなく、赤信号などではバイクなどに囲まれ、人との距離が取れずに感染リスクが高まる。大きくルート変更して、目的地までの残る道のりは田舎道をのんびり走ることにした。徐々に道が狭まり、ネットでも確認した竹林を抜けると、視界が開けて眼下に濃緑の田園風景が広がった。
 その先にある吊り橋は、冷めた目で見れば地域の生活を支える古い橋かもしれない。が、周囲に広がる農村の緑は目に染みるよう。吊り橋をバイクで通りかかった初老の女性は、「日本もコロナで大変らしいけど大丈夫。美味しい野菜をたっぷり食べていれば」と言って採れたてのニンジンを分けてくれた。その笑顔にまた癒やされ、往路の疲れも吹っ飛んだような気がした。

(長谷川周人、写真も)

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