【火焔樹】 ダルビッシュの活躍に思う

 ダルビッシュ投手が大リーグで見事な活躍をしている。彼はイランと日本のハーフである。今では日本の宝とまで呼ばれるようになり、表立って彼の出自を問う人は誰もいなくなったが、野球選手として頭角を現した中学生のころには、名前や風貌が純粋な日本人ではないということでいじめにあったそうだ。
 皆と違うということでそんな体験をしたのは彼だけではないだろう。古くは四百勝の金田投手、世界のホームランバッター王選手もそうだろう。彼らは、実力で周りの声を消し去り、国家レベルで賞賛を浴びるまでに至った。
 こんなことを書くのは大きなためらいがあるが、日本には上述のような見方が存在すると感じるのは私だけだろうか。
 さて、インドネシアではどうだろう。バドミントンの世界チャンピオンやオリンピックの金メダリストとして一世を風靡したルディー・ハルトノ、リム・スイ・キン、スシ・スサンティーは皆中国系インドネシア人である。
 インドネシアの社会でも、中国系というだけで社会的な差別が多く存在する。しかし、名声を得た彼らは国民の英雄としてたたえられ、バドミントンを通して、ある意味、非人間的ともいえる扱いを吹き飛ばしている。
 日本でもインドネシアでも「彼らは国を背負っているから」と同じ答えが聞かれるが、国を背負えば差別が消えるほど単純なものなのだろうか。名声を得たとたんに掌を返したように見方が変わる社会の態度に、違和感や偽善を感じる。
 過去に私は二度、明らかに出自を理由に「どこの馬の骨ともわからぬ奴」と中傷を受けた。若いころは憤慨し、相手を殴り倒したが、二度目は歳を重ねたこともあり、理不尽さを感じながらも「自分に信用がないからかな‥」と流せるくらい大人になっていた。
 それでも今回、ダルビッシュ投手が観客総立ちの中、拍手喝采で迎えられ、ベンチへ戻る彼の姿を自分に置き換える私がいた。ダルと自分を重ね合わすなど自惚れもいいとこだが、彼が三振を奪った時のガッツポーズは、出自をめぐるもやもやをすべて吹き飛ばすに十分なほど爽快であった。(会社役員・芦田洸=ツヨシ・デワント・バックリー)

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