MRTで和解へ ジョコウィ氏とプラボウォ氏 大統領戦政治決着

 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は13日、4月の大統領選挙で2回連続の一騎討ちとなり、支持者間の亀裂が深刻化していた野党グリンドラ党のプラボウォ・スビアント党首と会談し、インドネシア国民が再び団結するよう呼びかけた。大量高速鉄道(MRT)に乗車し、改札口で記者会見を開き、レストランで昼食を共にするなどして和解ムードを強調。大統領選で生じた社会分断を政治決着で修復する構えを示した。

 ジョコウィ氏とプラボウォ氏は13日午前10時ごろ、南ジャカルタのルバックブルス駅改札前で抱き合い、固い握手を交わして再会の喜びを表現した。2人はMRTに乗り、座席に隣り合って座って話し、スナヤン駅で下車。改札前でジョコウィ氏は報道陣に「今朝は友人として会談の場を設けた」、プラボウォ氏は「MRTでの会談はジョコウィ氏の提案。感謝したい」と話した。初めてMRTに乗ったというプラボウォ氏は「素晴らしい。インドネシアもついに国民の利益となるMRTを持つことができたことを誇りに思う」とたたえた。
 この後、2人は駅から歩道を歩いて近くの商業施設fXへ。1階のレストラン「サテ・カス・スナヤン」で昼食を取りながら懇談した。ジョコウィ大統領はもはや双方の支持者は対立をやめ、同じ祖国を持つ国民として団結する時が来たと強調、「私とプラボウォ氏が友人、兄弟として旧交を温めたように、支持者も同じように交流を再開してほしい」と呼びかけた。
 プラボウォ氏は「まだジョコウィ氏に再選の祝福をしていないのかと聞く人がいたが、私は礼節というものがあり、会って直接伝えたいと答えていた」と説明。「大統領選で競ったり批判し合ったりしても、それは政治と民主主義のためだ。激しい戦いを終えた後は、インドネシアの同じ民族の子、国を愛する者として国のために最善を尽くしていく」と述べた。
 会談には与党幹部らのほか、両者の仲介役を務めたブディ・グナワン国家情報庁(BIN)長官の姿もあった。メガワティ元大統領の警護官を務めたことがあり、今回の会談実現に向け橋渡し役を担った。
 これまでユスフ・カラ副大統領が地元メディアに明かしたところによると、5月21日深夜以降に発生したプラボウォ支持者らによる暴動直後の23日、カラ氏は南ジャカルタのダルマワンサ・ホテルで約4時間にわたりプラボウォ氏と会談。プラボウォ氏はカラ氏の前で、デモを続行しようとしていたグループの代表に1人ずつ電話し、デモ中止を命じたという。
 これと引き換えに、プラボウォ氏は銃器不法所持や国家転覆などの容疑で拘束された退役軍人ら陣営幹部の釈放を要求。プラボウォ氏が選挙結果への異議を申し立てて棄却された憲法裁判所の法的決着とは別に、カラ氏がこれをのむことで政治的に決着させたとみられる。与党側は2期目を迎えるジョコウィ政権で、閣僚、国民協議会(MPR)、国会(DPR)幹部ポスト配分を交渉材料に盛り込みながら、野党連合への歩み寄りを進める考えだ。
 プラボウォ陣営を支えてきたイスラム保守勢力は14日、ジョコウィ氏とプラボウォ氏の会談を受け、相次いでプラボウォ氏との決別を宣言する声明を発表した。ただ、野党側はサウジアラビアに事実上亡命している強硬派指導者の帰還などを和解条件に挙げており、今回の会談は選挙戦終結を告げるだけにとどまる可能性もある。
 大統領選では、「インドネシア社会の分断」を憂慮する識者の見解が内外のメディアで取り上げられた。インドネシアでタブー視されてきたSARA(民族、宗教、人種、階層)に関する憎悪表現がSNSで戦略的に拡散され、実社会での対立を引き起こしてきた。保守勢力と野党連合が今後、どのような共闘体制を組んでいくか注目される。(蓜島克彦)

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